よく腫瘍を患った犬や猫の飼い主様の心配事として、「痛みは出ますか?」というものがあります。
人間も同様に、腫瘍の種類によっては痛みを伴うものもあります。
そういった疼痛を訴えやすい腫瘍の中に、腎臓の悪性腫瘍である腎癌というものがあります。
今回はこの病気についてご説明したいと思います。
腎臓にできる腫瘍は?
腎臓には色々な細胞の種類があり、どの細胞からも腫瘍が発生する可能性はあります。
腎臓の腫瘍自体の発生頻度はそれほど多くはないのですが、その大部分は腎臓の中を走る尿細管と呼ばれる管を構成する細胞からの発生が多いと言われています。
転移性の腎癌と異なり、原発性の場合は通常片側の腎臓が病巣に侵されています。
ちなみに腎臓に転移しやすい癌は膀胱癌、大腸癌、乳腺腫瘍があげられます。
一方で猫での腎臓腫瘍の場合はリンパ腫が多く、いわゆる腎臓癌の発生はほとんどありません。
症状は?
腎臓癌に侵されたとしても、見た目の尿にはあまり変化がないことが多いと思います。
片側の腎臓は正常に働いているので、血液検査上で腎臓の数値には変化がないことがほとんどですが、たまに腎臓から分泌されるホルモンの影響で、赤血球数が非常に多くなっていることもあります。
診断はレントゲンやエコー検査により簡単に見つけることができますが、腎臓癌については特定の症状はないため発見はしばしば遅れることがあります。
経験的に腹部を痛がる症状は数多くの犬で見られます。
このため食欲不振や活動性の低下がよく見られます。
また、腎臓はもともと血管の豊富な臓器のため、転移が多く見られます。
先ほども述べたように症状が進行した段階で発見されることが多く、見つけた時点で肺に転移していることが多いと言われています。
治療法は?
腎臓癌は抗がん剤などの化学療法の効果がほとんど期待できないため、治療法は外科的に癌に侵されている腎臓を摘出することになります。
腎臓癌は転移をしていることが多いこと、また発見時には非常に肥大化しているため周囲の血管を巻き込んでいるケースが多いため、セカンドセレクトでは事前にCT検査を行うことをお勧めしています。
転移もなく、主要な血管を巻き込んでいることがなければ外科手術を積極的に検討してもいいと思います。
手術自体は左側に発生した腎臓癌よりも右側に発生したものの方が難易度が高く、大きな血管を巻き込みやすいと言われています。
個人的にも右側の腎臓摘出はつねに緊張します。
どちらにせよ腎臓を摘出するためには、周囲の臓器や筋膜との癒着を剥離し、腎臓と大血管を結ぶ動脈と静脈を丁寧に結紮する必要があるため、難易度は少々高くなります。
術後は転移がないかどうか定期的に胸部のレントゲン検査を行うこと、片側の腎臓のケアをお勧めしています。
予後は文献によってまちまちですが、平均的な余命は1年程度と言われています。
あくまでも平均です。
まとめ
ペットの高齢化に伴い、セカンドセレクトでも様々な腫瘍についての治療を行う機会が増えてきました。
何かお困りのことがありましたら、いつでもお気兼ねなくご相談ください。