腫瘍と一言で言っても色々な腫瘍があります。
見た目で判断できるようなものもあれば、外見上からは全くわからないものあるし、聞いたこともないような名前の腫瘍も多く存在しています。
そんな外見からも判断できず、またなじみもないような腫瘍の場合には、しばしば診断までに時間がかかることもあります。
今回はそんな腫瘍の中のひとつ、多発性骨髄腫という病気をご紹介します。
多発性骨髄腫とは?
多発性骨髄腫は体を守る免疫担当細胞の一つのBリンパ球が骨髄内で腫瘍化したものです。
抗体を産生するBリンパ球は形質細胞とも呼ばれるため、骨髄の中で起こった形質細胞の腫瘍である形質細胞腫が骨髄で発生して起こることもあります。
人間では高齢の男性に多いと言われていますが、犬の場合は雌雄差はなく中高齢にみられる腫瘍ですが、猫の場合はかなりまれと言われています。
骨髄に起こる腫瘍性病変の影響のため、レントゲン上では骨が破壊されているような画像が得られ、血液検査上では高カルシウム血症が見られるほか、腫瘍にかかった動物たちも体のいたるところで痛みを感じることがあります。
また多くの場合は貧血などからくる食欲不振が見られ、そのほか腎不全などにより多飲多尿が見られることも多くあります。
検査方法は?
Bリンパ球は抗体と呼ばれるたんぱく質を主成分とした免疫物質を放出するのですが、腫瘍化したBリンパ球によって異常に産生された抗体のため、血液中のたんぱく質含有量が非常に高くなります。
ほとんどの多発性骨髄腫を疑う症例では、この高たんぱく血症を見て獣医師は病気を疑うことになります。
血液中に含まれるたんぱく質にはいくつか種類があるのですが、多発性骨髄腫を患った動物の血液はモノクローナルガンマパシーと呼ばれる特徴的なたんぱく質の変化があります。
これらは外部の検査を依頼することで判明するため、こういった所見が見られた動物の場合はすぐに検査を勧める必要があります。
実際にはこのモノクローナルガンマパシーのみで判断することができないため、レントゲンで骨が異常な所見があるかどうか、もしくは尿中に腫瘍化したBリンパ球から産生されたたんぱく質が検出されるかどうかなどで判断していきます。
これらの検査でも診断がつかない場合、最終的には骨髄の生検になりますが、状態の悪い中での全身麻酔による検査のため、リスクを回避することが困難になります。
治療法について
診断がついた場合、治療は早期に開始していきます。
基本的には抗がん剤を使用していくのですが、他の血液の癌であるリンパ腫などに比べると、使用する抗がん剤は経口投与になるため自宅で行え、薬価もかなり安いと思います。
犬の場合は比較的予後はよいとされているので、治療はある程度積極的に行ってもいいと思います。
猫の場合は残念ながら予後はとても悪く、抗がん剤の効果も出にくいとされています。
まとめ
セカンドセレクトでは様々な腫瘍の治療も行っています。
もし何かご不安なことがありましたら、いつでもご相談ください。