人間の子供もそうなのですが、食べ物ではないものをやたらと口に入れたがるのは、特に若いペットを飼っている飼い主様は気を付けないといけません。
誤食による事故は、動物病院でも非常に遭遇する機会が多い症例です。
基本的に異物を何か食べてもすぐに症状が出ることはありませんし、様子を見ていてもいい場合もあります。
ただ今回ご説明させていただくような食道内に異物が残留してしまった場合は、すぐに症状が出始め、割と緊急的に対応しないといけないことも多くあります。
大抵の場合は内視鏡などで対応することが多いのですが、今回はどのような症状になるのかなどご説明したいと思います。
どんなものがつまる?
食道内異物は普段であれば問題にならないようなものでも、異物として食道内を閉塞することがあります。
代表的なものは犬用のガムやおやつの類です。
特にガムは唾液のみでは溶けないうえに、粘膜に張り付いてしまうこともあるので、ガムを丸呑みするような犬は特に注意が必要です。
おやつでも食道内に詰まるようなちょうどいい大きさ、例えば小型犬であれば100円玉よりも少し大きいものであれば異物になる可能性もあります。
他にはひも付きのおもちゃなどもよく食道内の異物になります。
消化管は場所によって違った動きをするため、ひも状の長いものは上手く流れず色々なところで停滞する可能性があります。
食道内に詰まる可能性があるものは他にもいろいろあるのですが、ちょうどいい大きさであれば身の回りにあるすべての物が異物になりえると考えていただいた方がいいと思います。
食道内異物の症状は?
食道内に異物を詰まらせた動物は、突然動きが悪くなり、沈鬱な状態になります。
頻回の嘔吐は特徴的に見られるのですが、吐物はほとんど出ず、吐いても何も出てこないという症状が何回も見られます。
またよだれが大量に出始め、前肢の足先はよだれでかなり汚れるようになります。
症状の見た目の重症度はつまらした場所によって異なります。
咽頭から食道にかけてすぐ入ったところに異物がつまった場合は症状が激烈に出ます。
何度か経験はあるのですが、咽頭に詰まった場合は窒息することがあり、悲しい結末を迎えた場面も遭遇しました。
もともと咽頭が狭く、気管の入り口が閉塞しやすい形をしている短頭種は特に注意をした方がいいと思います。
胸部の食道で異物がつまったばあいは、見た目の症状は穏やかですが、沈鬱、食欲不振は強く残ります。
いづれにしても食道内異物は早めに対応したほうがいいものなので、何か食べたもしくは食べられてすぐに上記の症状が出るようであれば、すぐにご来院ください。
食道内異物の対応法
食道内異物はレントゲンでは確定診断ができないことが多いと思います。
上の写真の丸がついているところに異物があるのですが、はっきりとは映ってはきません。
本来食道はレントゲンには映らないのですが、異物があると空気の層が見えることがあるので、その場合は食道内異物を疑います。
ただ、経験上、飲み込まれた異物はほとんどの場合レントゲンには映らないため、バリウムを飲ませて確認する必要があります。
この際、食道内に異物がある動物は嚥下障害を起こしていることもあるので、バリウムの一部が気管に誤飲するリスクがあります。
少量であればほとんど問題はないのですが、一度肺に入り込んだバリウムは数年単位で遺残します。
一番幸運なケースは、飲ませたバリウムと一緒に胃の中に落ちていくか、グリセリンなどの潤滑剤を飲ませると食道から移動するケースもあります。
食道内から移動をしない異物は基本的には内視鏡で摘出もしくは胃の中に落とす処置になります。
ガムやジャーキーの類がつまっている場合は、消化されるのでその後の処置は必要ありません。
おもちゃのような異物は内視鏡で摘出できればいいのですが、食道から引っ張り上げることができないことも多く、胃切開にて摘出することになります。
ちなみに内視鏡は全身麻酔下にて行います。
セカンドセレクトでは内視鏡の設備もありますので、もし何かつまらしたような症状が見られた場合にはすぐにご連絡ください。
まとめ
食道内異物は突如としていきなりなります。
「普段は丸呑みしないのに・・・」、「いつもと同じものを食べているのに・・」などと困惑されている飼い主様も大勢いらっしゃいました。
ぼくから言えるアドバイスとしては、できる限りガムは丸呑みさせないよう必ず端を飼い主様が持って与えること、猫じゃらしのような紐がついたおもちゃは1人で遊ばせないことをお勧めします。
もしそれでもあれ!?と思ったことがあったら、いつでもご来院ください。