昔のコマーシャルで「芸能人は歯が命」というキャッチフレーズがありましたが、芸能人に限らず人間もペットも歯は大切にしたいものです。

犬や猫、ウサギも含めてですが、人間の様に隙間なくしっかりと歯が並んでいるわけではないので、実際のところ、人ほど歯の役割は大きくありません。

ですが、歯が原因で起こるうる疾患は色々とありますので、デンタルケアは非常に重要です。

とは言いつつも、ご自宅で動物の口の中のケアをするのはかなり大変で、多くの飼い主様がデンタルケアを断念してしまいます。

今回は、そんな家で行うデンタルケアを往診医の立場から、ちょっとしたアドバイスとご説明をしたいと思います。

ペットに虫歯はない 10787028685_dbafa0dab0

知っていらっしゃる方も多いとは思いますが、ペットにはまず虫歯という概念はありません。

なぜなら虫歯を起こす原因菌がペットの口腔内には存在しないからです。

ただ、口内雑菌はもちろんいますので、歯周病は起こります。

統計ではシニアペットの80%以上は多かれ少なかれ歯周病を患っていると言われています。

歯周病の弊害

歯周病の弊害は動物種によって大きく異なります。

経験上、犬場合は歯周病で食欲などの健康状態が落ちるようなことはあまりないと思います。

ただあまりにも歯周病が進むと、歯に歯石が多量に付着し、ひどい悪臭がし始めます。

それがさらに進むことで、歯周菌が歯の根の方に感染を起こし、膿瘍を形成します。

一般的には上顎の左右にある一番大きな臼歯が侵されやすく、場合によっては膿が溜まり目の下の皮膚から膿が出ることもあります。

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また犬歯の根でも起こるケースもあり、その場合は鼻から膿や鼻血が出てくるとが多くあります。

ここまで症状がでると基本的には全身麻酔下で抜歯するしか治療法はありません。

一方で猫の場合、こういった口内細菌が関連する歯周病もありますが、どちらかというと歯肉炎が慢性的に起こるケースがほとんどです。

犬と違い、猫の歯肉炎は食欲を著しく減退させるため、猫の体調に大きく関わってきます。

犬と同様、治療法は全身麻酔下での抜歯が第一選択になりますが、猫の場合は口内炎が慢性的に残るケースも多く、生涯にわたるステロイドなどの投薬が必要なケースも多くあります。

家でのブラッシング

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上記のような歯周病の弊害を予防するためには毎日の歯のブラッシングしかありません。

ただ、実際にはほとんどの犬や猫はブラッシングを非常に嫌がるため、人間の様に毎食毎にしっかりと歯を磨くことはできません。

ですが、ペットをブラッシングする際は飼い主様のスキルも重要ですので、何度か獣医師に教えてもらいながら行えば、少しづつできるようになります。

ぼくがよく教えるやり方は、犬の場合、マズルをしっかり握って、口を開かないようにします。

そしてその隙間から歯ブラシを滑り込ませ、盲目的に磨いていきます。

口を無理やり開こうとすると、大抵の犬は嫌がるため、口をつぐんだ状態でブラシをかけていきます。

一方で猫の場合は、力ずくでどうこうなるわけではないので、とにかく小さな仔猫の時から習慣づけるしかありません。

あまり長い時間やろうとするとかなり嫌がりますので、1回5秒程度にとどめておくことがポイントです。

猫は歯の本数がかなり少ないので、1往復、2往復のブラシだけでもかなりの汚れが取れます。

ブラッシングができない方は・・

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ブラッシングがどうしてもできない場合は代用品を使用するしかありませんが、始めに言っておくと猫は正直厳しいと思います。

申し訳ありませんが、猫の飼い主様にはあまり適切なアドバイスをすることはできません。

犬の場合はデンタルガムなどが代表としてありますが、ガムはつまらせたりする事故も多いので、必ず飼い主様が手で持って与えるようにしてください。

飼い主様が手で持つことにより、ガムを丸呑みしないため、必然的に噛む回数も増えるため、摩耗して歯石の予防効果が高まります。

またコングなどのおもちゃもいいと思います。

コングの中にジャーキーやピーナッツバターなどを入れこめるタイプだと、犬は夢中になって噛んでくれることも多いと思います。

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往診でのデンタルケア

往診でできるデンタルケアとしては、一般的なケアに加え、超音波スケーラーで歯石を取ることが可能です。

もちろん無麻酔で行いますので、ある程度大人しい仔に限りますが、経験上中型犬までであればほとんどの犬で行うことが可能です。

猫の場合は100%猫の性格にかかっていますので、一度行ってできなければあきらめるしかありません。

定期的な歯石除去は歯周病の予防に大きな役に立つほか、口臭もかなり防ぐこともできますので、ペットと一緒に暮らしていく上でのクオリティーの向上もかなり期待できます。

こうしたケアに加え、最終的にはやはり麻酔下での処置が必要になってくるケースもあります。

往診では残念ながら全身麻酔を使用することはできませんが、歯石除去後も定期てなケアを続けていけば、最終的には歯石除去のための麻酔の回数が格段に減ると思います。

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まとめ

ペットのは人間ほど歯の役割は重要ではないと言いましたが、正直な話、歯周病を患った犬猫の口の臭いはかなり独特なものです。

口臭が少なくなるだけでもかなりのメリットはあると思いますので、お気軽に往診でもデンタルケアをご利用していただければと思います。

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