犬や猫に代表されるペットも今や高齢化社会。
ペットも高齢になると人間と同じように色々な病気が出てきます。
そんな病気の中でも代表格が「腫瘍」だと思います。
ペットの腫瘍の中で最も発生が多いのは、体表にできる腫瘍です。
脂肪腫、組織球腫、乳頭腫といった良性の腫瘍の他、肥満細胞腫、乳腺腫など、時には悪性度の高いものも含まれる腫瘍もあります。
こういった腫瘍ができた場合、治療の第一選択としては手術での摘出があげられます。
ただし、先ほども言ったように高齢な個体が多いため、全身麻酔や入院などの負担を考え、治療を躊躇する飼い主様も多いと思います。
往診医としての意見としては、そういった腫瘍の中でも局所麻酔で、かつご自宅でもできる手術もあるので気軽にご相談して頂いては?と思います。
そこで、今回はご自宅で摘出することが出来る体表の腫瘍についてご説明したいと思います。
往診での摘出が可能な腫瘍
往診で腫瘍摘出に使用する麻酔は局所麻酔薬です。
基本的に動物は術中も我慢できずに動き続けます。
したがってあまりにも大きな腫瘍は摘出は困難になります。
ぼく自身の経験では、ソフトボール大の腫瘍をシーズー件から局所麻酔で摘出したことがありますが、基本的には直径3㎝を超える大きさになると、摘出はかなり困難になると考えて下さい。
また皮膚にできた腫瘍でも、皮膚の下の筋層にしっかりとくっついてしまっているものは不向きだと思います。
腫瘍のできている場所も意外と肝心で、顔周り、特に動物の視界に入ってくる場所は場合によっては摘出不可能になると思います。
したがって、ざっくりとした言い方にはなりますが、直径3㎝以下で、つまむと皮膚と一緒にぐりぐり動く腫瘍が、首よりも下にあった場合、往診で摘出することが可能となります。
手術を行うまでの流れ
往診で局所麻酔下で腫瘍を摘出するからと言って、それは簡易的に行われるという意味ではないので、術前の検査は必要だと思います。
局所麻酔とはいえども麻酔薬には変わりがないので、血液検査は行った方が無難だと思います。
また可能であれば、細い注射針を使用して、腫瘍の細胞成分を吸引し、病理検査を行うとさらに良いと思います。
特に大きな問題がなければ、ご自宅にお伺いして手術を行うことになります。
飼い主様に準備していただくものはあまりありませんが、バスタオルを数枚用意していただくと、動物を保定するときにスムーズになります。
術後のケア
局所麻酔下では、あまり電気メスなどを使用しないため、微量な出血が術後に見られることが多いため、圧迫包帯を術後にかけることがあります。
したがって、止血の確認のため、術後翌日は検診を行った方がいいと思います。
あとは抜糸を1週間後ぐらいに行いますが、腫瘍のあった場所、大きさによって多少の時期はずれがあると思います。
局所麻酔下で行うときのデメリット
局所麻酔で腫瘍を摘出する際に、高齢でも比較的麻酔のリスクがない状態で手術を行うことが出来る反面、動物は抵抗しますので、腫瘍自体がしっかりととれない可能性があります。
こういったマージンが少さから、悪性の腫瘍だった場合、転移を誘発する可能性もあります。
まとめ
個人的な経験則で言うのであれば、体表の腫瘍は局所麻酔下で摘出した方が、動物の肉体的負担はかなりすくなて済みます。
また、往診で行えば、すべてを安心できるご自宅にて終わらせることが出来るので、精神的な不安定さも最低限に抑えることが出来ます。
もし、ちょっとしたしこりに気づいたら・・その時には一度往診医に相談してみてもいいと思います。