人でもせきは出ると辛い症状の一つだと思いますが、犬や猫でもそれは同じことです。
特に咳は夜から明け方にかけて出ることが多いため、飼い主様も飼ってらっしゃるペットの咳の音で寝れなくなることもあります。
ペットが咳を出す理由は様々ありますが、その多くは投薬を必要とすることも多く、場合によっては長期的な治療が必要なこともあります。
今回は往診医の立場から、ペットの咳についてのご説明をしたいと思います。
まず確認していただきたいこと
発咳があったとしてもそれが必ずしも緊急的に動物病院に診せた方がいいとは限りません。
逆に肺や心臓からくる咳の場合は、レントゲンなどの検査をできる限り早く実施する必要があるので、通常の動物病院にへの早めの受診が必要です。
ご自宅で、その見極めを行うのは非常に難しいとは思いますが、寝ている時の呼吸の回数を数えてみるのが一つの手段だと思います。
気管支炎などの場合は、寝ている時の呼吸の回数には大きな変化はありませんが、肺や心臓に病変部がある場合は、呼吸の回数は多くなることがあります。
一般的には睡眠時の呼吸の回数が1分間で30回以上であれば、肺や心臓の異常をうたっがっていくので、往診ではなく通常の動物病院に受診することをお勧めします。
若い犬の咳の場合
若い犬の場合はほとんどの場合は気管支炎だと思われます。
原因は「ケンネルコフ」といういくつかの細菌やウイルス性の気管支炎であることが多く、重篤な症状に進行することは滅多にありません。
安静と抗生剤などの投薬でたいていの場合は良化していきます。
ただ、1㎏にも満たない小型の幼犬の場合は、すぐに食欲が低下し、低血糖を起こす恐れがあるので、食欲のあるなしはしっかりと観察しておいた方がいいと思います。
小型犬で老犬の咳の場合
年を老いた犬で多いのが、僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気です。
人でよく起こるような心筋梗塞と違い、心臓の中にある僧帽弁と呼ばれる心臓の弁が閉まりきらず、血液が心臓内で逆流を起こすため、結果的に肺に非常に強い負担がかかります。
また、気管支が細くなる気管虚脱と呼ばれる症状も起こすことも多いので、年老いた小型犬の咳は一度レントゲンの検査を実施するために、通常の動物病院に行かれることをお勧めします。
大型犬の咳の場合
大型犬の咳の場合、その多くが気管支炎であることが多いと思います。
とにかく大きな声で吠えるので、気管支に炎症を起こすことが多く、治療に抗炎症剤などを用いるケースもあります。
また、小型犬よりも痰が絡むようなしぐさがよくみられるので、去痰剤なども使用します。
ただし、レトリバー系やバーニーズマウンテンドッグのような犬種では、胸部の腫瘍も比較的多いため、寝ている時の呼吸の回数が増えるようであれば要注意です。
猫の咳の場合
猫は循環器や呼吸器の症状が自宅で見つかりにくく、意外と病状が進行した状態で発見されることが多いと思います。
犬に比べて、心臓の疾患からくる発咳は少ないのですが、犬にはあまりない喘息系の症状が出ることがあります。
咳が目立つようになったら喘息を疑い、抗アレルギー薬を投与していくのですが、症状は緩慢に進行するので、最終的には自宅で酸素をかがせられるような設備が必要になることもあります。
酸素テントはレンタルが簡単にできるので、もし咳と同時に睡眠時の呼吸数が増えてくるようであれば、準備を整えていたほうがいいと思います。
まとめ
正直にお話しすると、循環器や呼吸器の病気は往診には不向きだと思います。
こういった疾患は、初期段階からエコー検査やレントゲンを実施したほうがいいからです。
往診ではこういった検査はできません。
ただ、呼吸が苦しそうだったり、咳で苦しそうだったりする動物を移動する負担もあるので、早急に動物病院に連れて行くべきかどうかの一次判断に往診を使ってみるのは非常に有効だと思いますので、あれ?と思ったら相談だけでも構いませんので一度ご連絡ください。