犬の整形外科で、何と言っても多いのはやはり骨折整復です。
以前は骨折する原因の多くは交通事故で、骨盤を骨折することが多かったのですが、最近はもっぱら小型犬の前肢の骨折がほとんどです。
体重が2kgに満たないトイ種やイタリアングレートハウンドなどの前肢の骨折は、その体の小ささや体格上の特徴から、手術を行ったとしても癒合不全や再骨折などのリスクがつきまといます。
こういった犬種では、手術自体も大切なのですが、術後のリハビリケアが大きく骨折の治癒を促していくのには重要になります。
セカンドセレクトでは昨今の整形外科の特殊化が進んでいる背景から、整形外科の手術は基本的には専門性のある動物病院をご紹介しています。
ただ、術後のリハビリのケアを病院内もしくはご自宅で一緒に行うことは可能です。
往診でもリハビリのご依頼はよくお受けいたしますので、今回はこういった骨折の手術を行った後のリハビリケアについてご説明したいと思います。
そもそも、なぜリハビリが必要か?
一般的に細い骨が骨折した場合には、ギブスでは治癒しずらいと言われています。
理由は骨が細いと骨折の断端が安定しにくく、骨のもとになる細胞が定着しないからです。
したがって、小型犬の骨折を治癒するためにはインプラントを設置し、まずは強固な固定をしないといけません。
そのうえで、物理的な刺激を骨に与えることで初めて骨のもとになる細胞が発達していきます。
通常であれば足先に適度な刺激を与えるだけで骨折の治癒を促すことが出来るのですが、小型犬は術後は患肢を使うのをためらうことも多いので、積極的なリハビリが必要になることも多いのです。
手術後約1か月の間のリハビリ
術後の初期では疼痛が残ることが多いので、積極的に痛み止めを使用していきます。
術後1~2週間ほどすると疼痛も取れるので、患肢の着地訓練を行います。
この時点ではギブスをまかれていることが多いので、まずは犬の反射を利用したリハビリがいいと思います。
犬をお腹から抱っこしてテーブルなどに近づけていくと、反射的に着肢します。
犬がテーブルを目視していないとうまく手をかけてくれないので、注目するようなおもちゃやお菓子をテーブルの真ん中あたりに置くといいと思います。
このリハビリの利点は、患肢に全体重がのることがないので、まだ負重が安定しない状態からでも開始することが出来ます。
1回5分程度を何回か行うことがお勧めです。
また鍼治療や電気刺激により刺激を促すことも有効とされています。
こういった理化学療法はセカンドセレクトではよくやられています。
往診でもご依頼が多い内容になりますので、お気兼ねなくご相談ください。
ギブスで固定をしていると関節が硬くなるため、ギブスが取れた時点で手首と肘の関節のストレッチも行います。
ギブスが取れるのは術後3週から4週あたりだと思います。
片方の手で前脚の根元を抑え、片方の手で肘をゆっくりと屈伸させていきます。
あまりスピードをつけずにゆっくりと行うのがいいと思います。
特にギブスをしていると手首の関節が固まることが多くあるので、片方の手で肘を保持し、ゆっくりと手首を屈伸させるのも有効です。
ほとんどの犬が屈伸運動を嫌がるようなしぐさをするので、誰か一人に体を支えていたほうが安定して屈伸ができると思います。
こういった関節のストレッチは、今後スムーズに歩行訓練させるためには必要不可欠なものとなります。
手術後約2か月の間のリハビリ
このころになると骨の治癒も大分と進んでいくので、リードをもってゆっくりとした歩行訓練が可能になります。
なかなか前脚を使って歩いてくれない犬では、後ろをかかえて手押し車をしてあげるといいと思います。
稀に、予想以上に手首の関節が硬くなる犬もいるので、こういった歩行訓練に加え、先ほどご説明したストレッチを加えるとよりいいと思います。
それ以降は?
順調であれば、外見上はほぼ元の状態に戻っていることが多いと思います。
ただし、骨が元の強度に戻るまでにはまだ数か月かかるので、実際のところはリードなしでの自由な歩行は危険だと思います。
一度骨折して治ると強い骨になるのはあくまでも太い骨だけであり、小型犬の前足の骨は元の状態に戻れば御の字です。
不安が残るようであれば、以前にご紹介したコラーゲンのサプリメントや、理化学療法を加えるといいと思います。
まとめ
手術した後の管理のほとんどは飼い主様にゆだねられることになります。
セカンドセレクトでは整形外科の手術は現在のところ行っていませんが、その後のリハビリ治療などで飼い主様のお手伝いをさせていただいています。
ご自宅での管理にもし不安を感じたら・・いつでもお気兼ねなくご相談下さい。