臨床の現場で診察をしていると、究極の選択という場面にはよく遭遇するものだと思います。

思いもかけず、いきなり飼っているペットに重大な病気が見つかるも、本人の状態や年齢のためにリスクが非常に高い治療になってしまう。

そのうえで治療を選択をしないといけない、という経験をお持ちの飼い主様もいらっしゃると思います。

獣医師としてもどれが正解の治療なのかは、結果を見て判断できるわけではないので、飼い主様に提案する方法、提案の仕方など苦慮することよくあります。

それでも最終的には何かしらの方法をとるしかないのですが、どんな選択をしたとしても飼い主様に後悔が残らないようには努めていきたいと思っています。

積極的な治療を進めるべきか、それとも自宅で温和に看取ってあげるべきか・・・今回はこういった永遠のテーマについて書いてみようかと思います。

積極的な治療をした方がいいと思われる状況

どんなものが積極的な治療かというところから考えないといけないとは思いますが、一般的なイメージとして、麻酔をかけて処置もしくは手術をするとか、抗がん剤を使用していくとか、入院させ集中管理が必要だとかそういったものだと思います。

治療費が高額になるというのも一つの要素だと思います。

もちろんその治療の内容だったり、ペットの健康状態や年齢によっても大きく変わっていくものだとは思います。

個人的な意見として積極的な治療を行うべきかどうかは、治療を施さなかった後の時間に動物が苦痛を感じて過ごさないといけない状況になるかどうかだと思います。

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具体例を挙げるのであれば、何らかの理由で胸水がたまるような病気にかかってしまった場合などがその状況にあたると思います。

胸水がたまった動物は通常呼吸困難におちいることがほとんどで、通常の生活のなかでの少し動いただけでとても苦しげな表情を浮かべます。

たとえそのペットが高齢だったとしても、ただ食欲がないとか元気がないとかという状況であればそれを受け入れてもいいかと思います。

ですが、胸水がたまってしまったペットは生きているだけでもかなり辛そうです。

こういった状況では年齢やリスクに関係なく、躊躇せず積極的な治療に進んでもいいのではないかと個人的には思います。

ぼくが飼い主様に治療の選択をご提示させていただく際にはいつもこのことを考えています。

手術をしないと痛みを伴いながら生きていかないといけないのか?抗がん剤を投与しないと苦しみを抱えながら生活しないといけないのか?

治療をしなかった後の生活を必ず想像します。

特にペットが高齢だったり、状態が悪い場合、治療後に今抱えている限界を超えた苦痛が取り除くことが可能な治療なのか?・・ここが一つの判断材料になるかと思います。

あまり積極的な治療をとらない方がいいと思う状況

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極端な話かもしれませんが、どんな治療行為にもリスクはつきものです。

抗生剤やかゆみ止めの薬を飲むだけでも副作用というリスクはありますし、去勢手術をする場合にも全身麻酔というリスクはあります。

ぼくは重篤な病気を患ったペットの治療を行うときに、いつも飼い主様にお話しさせていただいていることがあります。

治療を選択する際に重要なのはそのリスクではなく、治療を乗り越えた後に得られるメリットがリスクに比べた時に、十分あるのかというのが重要だということです。

例えば手術をしないと明日死んでしまうような病気だった場合は、そのペットがどのような状況でも治療を進めるべきだと思います。

リスクはあってもそれを乗り越えた先に平穏な生活が送ることができるという可能性、メリットがあるからです。

それに対し、平均余命を迎えてしまったペットがちょっと元気ないかと思って動物病院に連れて行ったら、思いがけず癌が見つかってしまったときなどが例に挙げられるかもしれません。

その治療として抗がん剤を選択するかどうかという状況であれば、いつもぼくはあまりお勧めしていません。

理由は平均余命をとうに迎えてしまっているので、そこで治療を施したとして、どれほど余命を伸ばせられるかという点で疑問が残るからです。

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抗がん剤を使用したとしても残っている余命は変わりません。

そういった意味では抗がん剤のリスクの割にはメリットが少ないのでは?というのが例えばの話にはなりますが、ぼくの意見です。

繰り返しの文章にはなりますが、考えるべきことはリスクの大きさだけでなく、治療によって得られるメリットがリスク以上のものがあるのかどうか、これが重要だと思います。

メリットが少なければ、治療はあまり色々と進めていくべきではないと思います。

緩和治療と延命治療

積極的な治療を選択しなかった場合、どの治療が緩和療法で、どの治療が延命治療なのか、それで大きく悩まれる飼い主様もいらっしゃいます。

治療を選択して、ペットの苦しむ時間だけが増えてしまうのでは?といったご相談をよく受ける機会があります。

一般的な考えとして、延命治療とは本人に生きているという意識はなく、人工呼吸器や胃ろうなどの医療行為で生かされている状況が延命治療にあたると思います。

ただ実際には緩和と延命の治療の線引きは、飼い主様によってかなり異なります。

状態が落ちてきたペットに皮下補液を行うことも延命治療だと考える方もいらっしゃいます。

可能な限り食事をとらせるため、自宅で経鼻カテーテルをつけ給餌することが緩和療法だと考える飼い主様もいらっしゃいます。

個人的な意見では自宅でできるようなことであれば、それは延命には当たらないのでは?と考えています。

自宅で無理のない行為であれば、施してあげるのがいいと思います。

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まとめ

飼い主様がこういった状況に遭遇した時、治療の選択を悩むことは仕方がないことかと思います。

人間の場合は、医者との相談だけで治療を選択せず、治療を受ける側のメンタルケアも含めたカウンセラーとも相談しながら進めていくような環境も整ってきています。

こういった医療知識の専門家だけではなく、治療を行った、もしくは行わなかった後のケアを行う専門家も今後の獣医療には必要では?と思いながら診察しています。

実際にそのような資格を持って活躍している方もいらっしゃいますが、獣医療のなかではまだ認知度が低い状況です。

もしこの記事を読んでいただいたあと、専門のカウンセラーともご相談したいというご希望がありましたら、ご紹介させていただくこともできます。

お問い合わせだけでも構いませんので、お気兼ねなくご連絡ください。

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