医療現場の中では安楽死、尊厳死の問題はいつでも非常に難しい問題の一つだと思います。

日本だけでなく、安楽死が法律上認められているような国でも、時折非常に取り扱いが難しい案件です。

特に人間でないペットの場合、その規定もあいまいなため、誰がどのように判断するかさえ手探りの状況が続いています。

往診医としても、この問題に出会うことは往診医療というその性質上、通常の動物病院よりもその割合は多いと感じています。

今回は「安楽死」を選択をする飼い主様が、実際のどのようになったらその時期だと思うのか、セカンドセレクトにご依頼があった例をお話したいと思います。

病状が重くかつ何らかの痛みや苦痛が目に見えてある時

もっともよくあるのがこのケースです。

コントロールが非常に困難なけいれん発作が断続的起こるとか、ある種の腫瘍で痛みが強く出ているため、苦し気な鳴き声を出しているとか、胸部に何らかの疾患を抱えるため、息苦しくみているのも忍びないなどその症状は様々です。

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往診での安楽死をご依頼される前には、ほとんどのケースでは抱えている病状に対しての診断が済み、飼い主様が病状の把握を正確にされています。

そのうえで治療をどこまでするかは、飼い主様によって若干の違いはありますが、客観的にみてもほ治療の効果に期待ができるような状況ではないことがほとんどです。

こういったケースでさえも、安楽死の線引きは非常に難しいのですが、安楽死が選択肢の一つに入ってくるのは仕方がないことだと個人的には思います。

動物は元気だが何らかの障害を残しているために介護するのが不可能になった時

これも往診に依頼がある方ではよく遭遇するケースです。

後肢が麻痺をしていて、排尿、排泄が滞っているとか、腫瘍があまりにも大きくなり自潰して、そのケアが非常に困難だというのが前提条件になっているうえで、飼い主様のご事情が絡んでくることが多いと思います。

飼い主様自体がご高齢になってしまい、ほかに里親に出すあてもなく、物理的に動物の介護をするのが困難だとか、介護ノイローゼになってしまって、飼い主様自体が病気になってしまうなど問題が同時によく発生しています。

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ご自宅にお伺いして共通して思うのは、飼い主様の動物に対するケアは非常に行き届いており、本当に苦渋の選択なのだろうというのが一目見てわかります。

こういったケースでも安楽死が選択の一つになってしまうことは非常に不幸なことだと思いますが、実際にある相談としては非常に高い割合を占めていると思います。

まったく病状の兆候はないが何らかの理由で自宅での飼育が困難になった時

往診に行くとよく思うのが、ご家庭の事情というのは10家族10色であり、抱えている問題も色々な事情が複雑に絡み合っているため、家族以外の人間が解決するのはほぼ不可能であることが多いのだということです。

実際にこのケースで安楽死をご相談するご家族の方々は、かなり特殊な状況下で動物を飼育されていることが多く、飼育していくことが困難な理由は必ずしも動物側だけにないことも多くあります。

またこのケースで悩まれいてる方は、かかりつけの獣医師もいるのですが、少し後ろめたさもあり、通常の動物病院にはご相談しづらいと思われている方も多くいらっしゃいます。

もちろん、鳴き声がうるさいとか、ただ単に気に食わないなどといった程度の理由ではなく、よくあるのが動物が非常に攻撃的なため、家族の誰かに直接的な被害が出ているというケースです。

また、行動療法、薬物療法などの色々な治療法はすでに実施して、里親などの検討もすでにしている方がご相談に来るため、よりその悩みは深刻化しており、修復するのが不可能であるのが容易に想像できます。

こういったケースはかなり慎重な判断がいる為、獣医師によって依頼を受けるかどうかは賛否両論かもしれません。

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まとめ

安楽死はいつでも難しい案件だと思います。

人間が動物の寿命を決めるというのは、1側面だけの倫理観で善悪を決めることが出来ないため、やはり多数の方にご相談するのがまずはいいのではないかと個人的には考えています。

この記事もそういった悩まれている飼い主様の一つのヒントになればと思っています。

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