誰しもが病気にはかかりたくないもの。
特に慢性的な疾患は、終わりがなく、それに費やす時間的な労力と費用は、大きなものになります。
ぼくも診察でよく経験するのですが、比較的若くて一見健康状態に全く問題がなさそうな猫でも、健康診断で血液検査などを行うと、意外と肝臓などの値が高い時があります。
経験上、若いうちからの肝障害は、治療しても反応がうすいことが多く、長期的な経過を観察する必要があります。
今回は往診医として、こういった猫の肝障害にどのような対応をしていくのがいいのかご説明したいと思います。
猫の肝障害の原因
猫の肝障害の原因のほとんどは肝臓に原因がないことが多く、ほかに原因があって、2次的に肝臓が悪化しているケースがほとんどです。
比較的若い年齢の場合、その原因は一過性もしくは持続的な胃腸の炎症が、胆嚢という臓器に波及して起こります。
肝臓と胆嚢は胆管という細い管でつながっているため、胆嚢の炎症が肝臓に影響するからです。
血液検査上、値が非常に高かったとしても、外見上は普通の猫と変わらず、何かしらのついでで行った検査で、初めて発見されるケースがほとんどです。
一方で、年齢が進み、ある程度の年齢になると、猫の肝障害の多くの原因は甲状腺機能亢進症という病気が関係してくることがあります。
甲状腺はホルモンを分泌腺でのどぼとけのあたりの機関に張り付いている臓器です。
ここから分泌されるホルモンが過剰になると、全身の代謝が過剰に反応するため、全身の細胞が疲弊していきます。
結果として肝障害も起こるのですが、かえって食欲や元気は普通の猫よりもあることが多く、見た目は病気なのかどうか微妙な感じです。
こういった原因から、肝臓の障害が著しく悪化し、肝硬変を起こすケースもあれば、腫瘍などができるケースもあり、こういったケースでは猫の一般状態は著しく低下しています。
検査方法
基本的な検査として、血液検査、レントゲン、エコー検査などがありますが、腫瘍などが疑わしいケースは、細胞を採取して病理診断を行います。
特に血液検査は、肝臓の状態を定期的に観測するには非常に有効な検査になるので、一度肝障害の診断がついた場合は、定期的な検査を行ったほうがいいと思います。
肝臓以外の場所にも異常があった場合、その病気に合わせたモニタリングが必要になりますが、どちらにせよ慢性的な疾患となりますので、継続的な検査が必要となります。
治療法
大体のケースでは内服による投薬治療と食事療法になります。
外科治療が必要なケースはほとんどありません。
問題なのは、猫に定期的に薬を飲ませるのは大変な労力を要することもあり、飼い主様が投薬ができないため、なくなく治療せず経過観察のみということになるケースもあります。
食事などは、処方食などもあるのですが、こちらも食べてくれないケースもあり、猫の食事療法はかなり難しい場合が多いと思います。
特に猫は、食事の代謝がとても特殊で、絶食時間が長期的に続くと、肝障害がすすむこともあり、食事は食べられるものを食べさせた方が、結果としていい状態を維持できることも多くあります。
まとめ
こういった猫の慢性的な疾患は、いくつかこのブログでも紹介しましたが、往診がより適しています。
ストレスが少ない、検査など通常の動物病院と同等のものができるなど、メリットは非常に多くあります。
もし慢性的な疾患を患ってしまったのであれば、往診は一つの選択肢として、頭の中に入れていただければと思います。