突然、飼っている犬が立てなくなったら、どんな方でも慌ててしまうと思います。

犬が立てなくなる病気というのはいっぱいあるのですが、よく観察していただくと、飼い主様でも立てなくなる理由がなんとなくわかるのではないかと思います。

慌てて救急病院などに連れて行く前に、冷静に観察していただくことは、その後の治療を進めるうえでも重要なヒントになります。

今回は犬が立てなくなる、よろける病気の中で、特に多い前庭疾患についてご説明したいと思います。

前庭疾患とは?

前庭とは耳の奥、鼓膜の向こう側、内耳にある、平衡感覚をつかさどる器官です。

前庭疾患では、この前庭の機能が失われ、平衡感覚がなくなることで起こる病気です。

前庭は両耳の内耳にありますが、通常片側のみの機能が低下します。

症状はどういったもの?

どちら側の前庭の機能が失ったかによって症状は違ってきますが、通常機能を失った前庭側の方によろけて、首をかしげるように斜めにむきます(斜頸)。

6292310411_e48271b173

目を見てみると首が傾いているのと逆側に目線が急速に動き、ゆっくりと傾いている側に流れてきます(眼振)。

このような状態では、犬は非常に気持ち悪くなり、食欲不振、嘔吐などが見られるようになります。

ただし、一般的にはこの前庭疾患で急変を起こすことはありませんので、過度の心配は不要かと思います。

原因は?

原因としては外耳炎から発生した雑菌が、鼓膜を超え、中耳、内耳に侵入することによる内耳炎から発生するケースもあります。

zenntei

特にコッカースパニエル、パグなどの特定の犬種で起こりやすく、たいていの場合はひどい耳垂れを起こしていることがほとんどです。

一方で、特別な理由なく突然起こるケースもあります。

たいていの場合は、前庭の老齢性の変化として現れることが多く、全犬種でみられるのですが、特に日本犬、柴犬では頻発する病気です。

治療について

前庭そのものを直接外科的に治療することはできません。

したがって、抗生剤、ステロイドが主体となる薬を投薬していきます。

経験上、初期段階では嘔吐がひどいため、内服の使用は非常に困難なため、注射による治療を行います。

chuusha

また嘔吐を抑えるために、嘔吐止めも注射薬で使用していきます。

急変するリスクは少ないのですが、たいていの場合老犬に起こるため、食欲不振による体力の低下は非常に顕著に起こります。

そのため、皮下補液剤を使用して脱水を防ぎ、強力な制吐剤により嘔吐を抑え、強制的な給餌を行う必要があります。

治療はおおよそ2週間程度続きます。

完全に治癒する犬もいれば、首の傾きが残る犬もいますが、日常生活にはほぼ影響が出ないレベルまで回復するのがほとんどです。

まとめ

sanpo

僕の個人的な意見としては、この前庭疾患は中型犬以上の老齢犬に頻繁に発生します。

したがって、犬を病院に連れて行くことがままならないケースも多々あります。

自力で歩行できるようになればいいのですが、初期段階ではかなり難しいとお思います。

こういった場合は往診の動物病院などを利用していただくと、犬の負担だけでなく、飼い主様の負担も軽減することが出来ると思います。

いざ病院に連れて行こう、でも連れて行けないような状況はいつやってくるかはわかりませんので、かかりつけの病院の一つとして、往診という選択肢を持っていただくことをお勧めします。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう