犬の飼い主様にとってこの時期は何かとやることが多い時期。

フィライリアの予防に加え、混合ワクチンや狂犬病予防のワクチン接種や、ノミダニの予防薬も始めないといけない時期です。

予防できる病気があるということはいいことだと思いますが、飼い主様の中にも「狂犬病は予防するメリットあるの?」と言う方もいらっしゃると思います。

確かにここ数十年、日本において狂犬病の発生は1件もありません。

したがって予防という意味では狂犬病ワクチンは、今の日本では意味はないかもしれません。

それにもかかわらず、犬を飼育した場合、登録の義務とともに狂犬病ワクチンの接種は義務となっています。

確かにおかしな話ですが、今回はこんな少し矛盾している狂犬病のワクチンについてお話したいと思います。

狂犬病とは?

狂犬病がなぜ重要なのかというと当然のごとく人にも感染が可能であり、致死率がとても高い病気だからです。

日本では言葉だけであまりなじみのない病気ですが、途上国ではまだ多くの人(年間550人程度)が亡くなっています。

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狂犬病ウイルスは犬と人だけでなくほとんどすべての哺乳類に感染することが出来ます。

日本では狂犬病に対しては非常に厳しい検疫をかけてはいると言われていますが、実際には犬、猫、キツネ、アライグマ、スカンクのみが対象であり、その他の動物は検疫の対象にはなりません。

したがって、いつ日本に入ってくるかは、実際にはわからないという意見から、今でも狂犬病のワクチンを接種しないといけないという理由になっています。

日本の狂犬病ワクチンのルール

狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法と狂犬病予防法施行法にて定めてられています。

その内容を一文で書くのであれば、狂犬病ワクチンは明日死ぬような犬でも1年以内に狂犬病ワクチンを例外なく接種することと言っています。

接種時期については制限はなく、本来は春先に接種する必要は全くありません。

ほとんどの自治体で4月~6月末時に接種しないといけないと指導が入っていますが、実は完全なるローカルルールであり、特に従う必要はありません。

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この辺りに狂犬病ワクチンの最大の問題点があり、狂犬病予防法とその施行法はあまりにも古い法律でかつほとんど見直しもされていないので、誰一人として完全に把握している人はいないと言っても言い過ぎではありません。

もちろん自分も含めた獣医師もです。

ですから、そんなローカルルールが定着してしまったのだと個人的には思っています。

ちなみに練馬区では生活衛生課という部署で取り扱いをしています。

狂犬病ワクチンを接種せずにいると?

接種の義務が法律で定められていることは事実です。

ただ、強制力、罰則などはほぼありません。

未接種であっても伝染病としての観点であればほとんど問題はないのですが、人や他の犬をかんでしまった場合、その後の対応は狂犬病ワクチンが未接種の場合はかなり厄介なことになります。

最悪、裁判沙汰になった時には心象が非常に悪くなるので、不利な判断をされてしまうことが多いと思います。

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また公共施設をはじめ、民間の宿泊施設、ドッグランなどにも立ち入ることが出来ないこともあり、やや不自由になることは多々あると思います。

狂犬病猶予書による申請

そうはいっても、何らかの病気を持っているとか、非常に高齢であるなどの理由で、ワクチン接種自体により体調を悪化させる可能性はあると思います。

狂犬病の発生のない今日では、このような状態のあまりよくない犬に狂犬病ワクチンを接種することは医学的にあまり好ましくありません。

この場合、獣医師が発行する狂犬病猶予書という書類を保健所などに提出する方法があります。

日本全国どこの動物病院でも、もしくは集合注射などでも発行することが可能で、獣医師の判断により1年間のゆうよを定めることが出来ます。

ただし、これは公文書ではなく、私文書であり、獣医師個人が私的に発行しているものになります。

狂犬病猶予書を持っていたとしても、検疫所などでは全く意味のないものであり、場合によっては公営の施設では狂犬病未接種であることを理由に行動が制限されることもあります。

それでも唯一、狂犬病猶予書だけが狂犬病のワクチンを未接種だったとしても、法律的に「飼い主」を守ってくれるものですので、自身の判断で狂犬病ワクチンを接種しないと決めるのではなく、獣医師と相談し狂犬病猶予書を発行してもらったほうがいいと思います。

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まとめ

結局のとこと、狂犬病ワクチンは義務ですので、よほどの理由がない限りは現在の日本では逃れることはできません。

個人的な意見としては、日本に狂犬病が蔓延することはまずないと思いますが、法律が変わらない限りは狂犬病のワクチンを接種しないといけません。

セカンドセレクトとして皆様にご協力できることは、自宅のようなリラックスできる空間で狂犬病ワクチンを接種するとか、相談したうえで狂犬病ゆうよ書を発行することなどが可能です。

飼い主様一人の判断で接種しないと決めるのではなく、お気兼ねなくご相談して頂ければと思います。

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