飼い主様の中には、夜寝る時など一緒に寝ている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
大型犬など飼われている方の中には、犬を枕にして横になる方もいらっしゃると思います。
そんな時、ふと胸に耳を当てると・・・心臓のリズムが一定でないことがあります。
一瞬、不整脈が出てる!?と思って様子を見ても、本人はいたって元気。
こういった相談は日常的に良く受けることがあります。
今回は、犬の不整脈についてご説明したいと思います。
そもそも不整脈とは?
不整脈とはその名の通り、心拍が安定しない状態にある症状です。
心臓は電気で動いているのですが、この電気は心臓にある2か所の発電する組織から発生します。
ざっくりと言えば、不整脈とはこのペースメーカーの役割をしている発電組織の異常もしくは、その電気を伝えるための経路が異常になることで起こることを言います。
よくある不整脈
一般的には心拍数が過剰に上昇することを頻拍、過剰に低下することを徐脈と言い、犬種(犬の体格の大きさ)によって定義が異なります。
実際に、飼い主様が心配になる不整脈とは、短い時間の間にこの頻拍もしくは徐脈が耳で聞いていてもわかることを言うのですが、医学的にはあまり重要でないことが圧倒的に多いと思います。
ご存知の通り、心臓は自律神経によって調整されているので、ちょっとした心情の変化や動作によって日常的に変化していきます。
また息を吸っている時には心拍は速くなり、はいている時には遅くなります。
こういった日常的な変化は、洞性不整脈とか洞性不調律と呼ばれていて、特に健康を害するものではないので気にする必要は全くありません。
病的な不整脈
正直な話、飼い主様が耳を当てた程度では、病的な不整脈はほとんどわかることはないと思います。
病的な不整脈は、心臓の一部分だけ動かなくなるとか、定期的な心臓のリズムがポッと抜けてしまうようなタイプのものが多いのですが、音から判断することは困難です。
ただ、犬でよくある僧帽弁閉鎖不全症と呼ばれる病気にかかっていると、心臓が頻拍となり、非常に強い音が聞こえると思います。
経験的には1分間で180回以上であるとあまりよろしくないので、安静時に心拍数が多いような場合には獣医師に相談してみるといいと思います。
また、最近になってよく遭遇する症例として、迷走神経性の徐脈と呼ばれるもので、著しく心拍数が低下する病気があります。
迷走神経は自律神経の一つで、吐いたり、咳をしたりすると活発に働くのですが、それが異常に活動することで異常な徐脈を引き起こします。
症状としては嘔吐後もしくは発咳後に心拍数が異常に低下し、血圧が低下して失神などを起こすことがあり、場合によっては最悪な状況を引き起こします。
一般的に小型犬であれば、1分間に80回以下であれば異常な徐脈と判断されることもあるので注意が必要です。
検査や治療方法は?
不整脈の検査は、もちろん心電図が有効ですが、付随している疾患もよくあるため、レントゲン、エコー検査、もしくはホルモン検査を含めた血液検査を行うことが必要です。
ただし、不整脈に対しての明確な治療法はなく、すべてが補助的な治療となります。
したがって病的な不整脈があったとしても、無治療で経過を見ていくことも多く、定期的に検査のみを行う犬がほとんどです。
まとめ
心拍数の変化にあれ!?と思って相談をしても、残念ながら往診ではレントゲンやエコー検査はできないため、的確な判断はできなかもしれません。
かといって、動物病院に連れて行っても、犬は興奮状態になるため、不整脈が見た目上消えてしまうことが多くあります。
個人的な意見では、経験ある獣医師であれば、飼い主様のお話や簡単な聴診だけでも、それが病的な不整脈なのかどうか、高確率で見抜くことができるので、安静にできるご自宅での診察は有意義なものだと思います。
とりあえず、あれ?っと思ったらお気軽にご相談ください。