最近、テレビのCMでもよく見られるのですが、人間も高齢になると尿漏れなどを含む排泄の異常は年齢の衰えとともに段々と問題になることが多いと思います。
これは犬や猫でも同じことで、高齢になった時に出てくる問題としては、排泄の問題は割とよくあるものです。
一方で病気とは呼べないような加齢による変化ではなく、病的な要因で出てくる排泄の問題もあります。
高齢な犬や猫の排泄異常が起こる病気については他の記事でもいくつかご紹介しているのですが、今回は膀胱腫瘍についてご説明したいと思います。
膀胱腫瘍はどんな症状?
膀胱腫瘍は最初のうちはほとんど無症状です。
人間にも膀胱の腫瘍はあるのですが、自覚症状を早い段階から訴えることができるので、初期段階のうちから治療に入ることが多いと言われています。
犬や猫の場合、無症状期に気づくことはほとんどなく、たいていの場合、高齢の犬や猫が難治性の膀胱炎が起こって初めて診断されることが多いと思います。
また、膀胱内の腫瘍は体の表層にある腫瘍と違い、腫瘍自体を採取して検査をすることがたまに非常に困難な場合もあるため、さらに発見が遅れる理由にもなります。
ただ割と症状の進行は緩慢で、膀胱炎のような症状があるだけで、食欲不振や活動性の変化などはほとんどないことが多いと思います。
大抵の場合は頻尿と慢性的に出る出血尿がその症状です。
ただし、膀胱の腫瘍はそのほとんどが膀胱の粘膜にある細胞から発生することが多く、また多くの場合、膀胱の出口で増殖することが多いとされています。
したがって、腫瘍がどんどん大きくなった場合は膀胱の出口を塞いでしまうため、排尿自体が困難になってきます。
場合によっては完全な尿道閉塞をおこしてしまい、重篤な状況になることもあります。
また膀胱周囲の組織に転移をすることが多く、腹腔内のリンパ節や隣接している腸管にも転移を起こすこともあるので、病状が進んでしまった場合、排便障害や強い疼痛が見られることもあります。
治療法は?
一般的には手術による腫瘍の切除がその治療法になります。
また抗がん剤などの化学療法もあり、点滴にて抗がん剤を投与する方法や直接膀胱内に抗がん剤を投与する方法があります。
実際の治療法は?
犬や猫の膀胱腫瘍の場合の治療における問題点は、動物が非常に高齢であることが多いことと、病状がかなり進んでいることが多いことです。
したがって、全身麻酔下の手術には耐えることができないであろう高齢の犬や猫が多いのと、診断が下された時には腫瘍の浸潤が非常に進んでいるので、手術をしても完全に切除できないことがほとんどです。
また抗がん剤に使用に関しても、膀胱腫瘍に対するプロトコールはあるのですが、その有効性には乏しいことがあり、副作用などの悪いところだけが目立つような治療になります。
結局のところ、膀胱炎様の症状のみが見られている段階では、積極的な治療を望まれる飼い主様はごく少数です。
セカンドセレクトではこういった膀胱腫瘍では、普段は痛み止めとして使用するのですが、付加効果としてある程度の進行を抑えてくれる薬を使用していきます。
また持続的に出血が見られるため止血剤などを使用し、細菌の発生が見られたときにのみ抗生剤を使用していきます。
体の中に癌がある中での生活は非常に不安は残ると思いますが、多くの個体では病気の進行でというよりは、普通に寿命を迎えることができることも多いというのが個人的な意見です。
まとめ
何も自覚症状がなくても、病院に行ったらいきなりがんを宣告されることは人間でも多いと思います。
ましてやモノを言わないペットであれば、ほとんどの病気が「いきなり」宣告されてしまいます。
自分のペットも高齢になり、この記事を読んで色々と心配が出てきたという飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にご相談ください。