めまいという言葉があります。
人間の女性や働きすぎのサラリーマンにはよくみられる症状なのですが、目が回って立てなくなるほどの症状が出ることもあります。
動物の世界でもこういった目が回る症状がみられることがあります。
動物の種類によって原因は様々なのですが、一般的には前庭疾患と呼ばれています。
今回は動物種によって異なる前庭疾患についてご説明したいと思います。
前庭疾患って?
ご存知の飼い主様も多いとは思いますが、前庭とは内耳にある三半規管を含んだ器官で、主に平衡感覚などの位置感覚を感じることができます。
左右の内耳に一つづつ存在しますが、鼓膜の向こうにあるため、肉眼的に外から確認することはできません。
前庭疾患は何らかの理由により、前庭に炎症がおこることで、平衡感覚の異常が起こります。
大抵の場合、斜頸と呼ばれるような前庭疾患がある側の方向に顔が傾く状態になります。
また眼振と言って、眼球が左右に振れだす症状も見られます。
まさしく目が回っているという表現が正しく、病状が発生した初期段階では起立することもままならないことがほとんどで、食欲不振や嘔吐などもみられることもあります。
犬の前庭疾患
犬の前庭疾患の場合、多くの場合は老犬にみられる特発性、つまり何の原因もなくいきなり前庭疾患が現れることがほとんどです。
この場合、眼振と斜頸が見られるほか、嘔吐と食欲不振が目立つようになります。
抗生剤やステロイドを投薬しながら経過を見るのですが、眼振が続いているうちは嘔吐、食欲不振が続くため、セカンドセレクトでは制吐剤を併用しながら、皮下注射にて経過を見ていくとをお勧めしています。
老犬が数日食欲不振が続くと、一気に体重の減少と活動性の低下がみられるため、自力採食が見られるまでは、皮下補液を行った方がいいというのもその理由の一つです。
数日して眼振が治まってくると食欲も回復してくるので、その後は内服に切り替え様子を見ていきます。
投薬は約2週間程度行い、ほぼ問題なく回復することが多いのですが、軽度の斜頸が後遺症として残ることもあります。
一方でフレンチブルドッグなどの特定の犬種の場合は、特発性ではなく重度の外耳炎が内耳炎に波及して前庭疾患が起きることもあります。
特にこれらの犬種では、耳道内の腫瘍の存在により、細菌の繁殖がとめどもなく起こるため、膿性の耳垂れが常に起こることが普通です。
こういった場合は外科手術も含めて検討しないといけないことも多いのですが、耳道内の腫瘍は手術が困難で、かつ後遺症も残りやすいため、慎重な判断が必要になります。
猫の前庭疾患
猫の前庭疾患はほとんどの場合、重度の外耳炎からの前庭疾患か、耳道内の腫瘍の存在によるものが多いと思います。
症状は犬の前庭疾患とほとんど変わらないのですが、犬と違い、何らかの基礎疾患があるために、その根本の疾患を治療しないと回復してこないことがよくあります。
ただこのブログでも何回かご説明させていただいていますが、腫瘍に代表されるような耳道内の異常は、根治させることがかなり難しいので、完全に症状から離脱するためには長期間必要になります。
また犬と違い、自宅での投薬が容易でないことも多く、しばしば飼い主様のご負担が大きくなります。
ウサギの前庭疾患
ウサギの前庭疾患は、一般的によく見られる症状ですが、犬や猫に比べて症状が重篤であることが多いと思います。
とくに斜頸の強さは首が180度以上回転することもあり、姿勢を保持することが出来ず、発作的のその場で回転し、眼球などに傷がつくこともあります。
前庭疾患の原因はあまりよくわかっていません。
口腔内などに存在している常在菌が内耳に侵入して症状が発現するとか、脳に寄生する原虫によって引き起こされるなど様々なことが言われています。
また、犬や猫に比べて使用可能な抗生剤やその他の薬が著しく少ないため、治療の選択肢も多くないというのもうさぎの前庭疾患の特徴です。
前庭や脳の炎症を抑えるために使用するステロイドに対しても抵抗性が弱いため、長期的な投与は可能な限り避けたいのですが、ステロイドを休薬すると再発が見られることもあるので、薬の止め時をはかるのはかなり難しいことがよくあります。
脳に寄生する原虫に対しての薬もあるのですが、その効能もはっきりとはしません。
いずれにしても犬や猫の斜頸と違い、ウサギの場合は症状が改善しないことも多く、発症後は介護生活を余儀なくされることも多いと思います。
まとめ
動物によって斜頸に対する治療法は異なります。
セカンドセレクトでは動物種にかかわらず治療を行うことが可能ですので、この記事を読んでご質問がある飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。