正確な統計が取れているわけではないのですが、飼育されているほとんどの猫と大半の犬は避妊手術が一般的に行われています。
そのため、自然発生的な子宮や卵巣の病気の数はかなり抑えられていると思うのですが、何かの理由で避妊手術を受けていない犬や猫が、中高齢になって生殖器系の病気にかかってしまうところに遭遇するのは比較的多いと思います。
未避妊の雌で起こりやすい病気と言えば子宮蓄膿症です。
また乳腺腫瘍も未避妊の雌には比較的多く見られます。
今回はそんな未避妊の雌で割とよく見かけるそのほかの病気、卵巣の腫瘍ついてご説明します。
卵巣はふつうどんな感じ?
犬や猫の子宮は双角子宮といってVの字の形をしています。
卵巣はその先端にくっついていて、猫や小型犬で5㎜程度、大型犬でも1㎝弱しかない小さな器官になります。
卵巣自体は固く充実したもので、犬などではよく脂肪に埋もれているため、正常な卵巣であればエコーなどで描写することはかなり難しいと思います。
卵巣が腫瘍化すると
腫瘍化した卵巣はほとんどの場合が嚢胞腺腫と呼ばれる良性の腫瘍です。
人間でも卵巣嚢胞とも呼ばれ、充実した卵巣に水疱が見られるようになり、サイズも少し大きくなります。
腫瘍化した卵巣は異常なホルモン分泌を引き起こし、通常にない発情行動を引き起こすほか、子宮や乳腺に働きかけ、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などを併発させる場合もあります。
まれに過剰な雌性のホルモン分泌により、皮膚病や貧血を起こすこともあります。
卵巣自体は非常に大きくなることもあり、場合によっては拳程度の大きさになることもあります。
悪性の場合のこともあり、腹腔内に転移を起こすこともあります。
・・・ですが本当にまれで、ぼく自身は悪性の卵巣がんは見たことはありません。
治療法は?
治療法は外科的な切除が唯一の方法です。
高齢でかつ全くの無症状であれば積極的な治療を考えなくてもいいかもしれませんが、たいていの場合は子宮蓄膿症などの併発疾患があることが多く、手術をせざる得ないことも多いと思います。
卵巣は悪性だったとしても転移がなければ切除すれば完治するため、抗がん剤などの追加治療は必要ありません。
ただし転移を起こしていた場合は、有効な治療法は存在しないため、緩和療法が中心となります。
予防法としては、2回目の発情前に避妊手術を行うことをお勧めしています。
通常の避妊手術であれば傷口もそれほど大きくなく、回復も早いと思います。
まとめ
動物医療では避妊手術が定着しているため、こういった未避妊が故の病気に遭遇する機会はかなり減っていると思います。
もちろん避妊手術を行うデメリットも数多くありますので、よくご検討していただければ幸いです。
もしどうしようかお悩みの場合は、お気兼ねなくご相談ください。