猫がかかる病気というものは、たまに原因がはっきりしないことがあります。
もともと犬のように与えた食事を一度にがつがつと食べるようにしないことも多いので、実際に食欲が落ちて病気なのかどうかもすぐにはわからない事もよくあります。
また、一日中よく寝ているので活動性が落ちているのかどうかも、数日たってから初めて飼い主様が気づくということも割とあることです。
健康な猫でも嘔吐が頻繁に起こることもよくあり、こういった猫本来の特性から、本当に病気なのかどうか獣医師ですら迷うこともよく遭遇するケースたと思います。
今回はそんな猫にこれといった特別な症状はないのだけど、あきらかに「シャキッとしない」という症状の時によくある原因の一つに膵炎があげられます。
以前と違い、猫の膵炎は血液検査で簡易的に調べることもできるため、往診でも十分に対応できるようになりました。
今回は膵炎を患った猫の往診の風景をご紹介したいと思います。
犬や人と違う猫の膵炎
人間でもよくあるのですが、お腹が痛くて吐き気が止まらないと訴えて病院に行くと急性膵炎と診断されることがあります。
犬の場合も人間と症状が告知しており、腸内細菌が何らかの理由で膵臓に感染を起こし症状を引き起こします。
膵炎は発熱、嘔吐、食欲不振が見られ、症状が激烈に進むと腹膜炎などを併発し、時に死を招く恐ろしい病気です。
ですので、往診では犬の膵炎の治療は中々うまくいかないこともあります。
一方、猫の膵炎の場合は感染などは見られず、症状も人間や犬のように顕著ではありません。
嘔吐や食欲不振は見られるのですが、1日1回や2回程度の嘔吐と食欲も2~3割程度は食べているということがよく見られます。
まさにパッとしない症状というのが猫の膵炎の特徴です。
今のところ猫の膵炎のはっきりとした原因はわかっていなのですが、おそらく何らかの免疫が関与している病気だと考えられています。
往診での検査・治療法
かなり以前では猫の膵炎はあまり特定する方法がなく、しばしば獣医師を困惑させていたのですが、10年程度前から猫の膵炎は血液検査で特定できるようになりました。
ちょっと調子が悪い猫を検査してもこれと言った原因が見つからなかった時には、膵炎の検査をおこなうという手順が一般的です。
現在では外注検査として検査を依頼すれば1両日中には結果を得ることが出来ますし、簡易的なキットを使用すればその場で検査をすることも可能になりました。
今回お伺いしたお宅の猫も定期的に膵炎の値を計測し、治療の計画をご相談しています。
ちなみに検査代は7000円です。
結果は2,3日以内にメールもしくは郵送にてご報告します。
遠方の飼い主様であれば治療薬も同様にご郵送します。
猫の膵炎の治療は、人間や犬と違い感染を起こして膵炎が起こっているわけではないため、抗生剤はあまり使用しません。
抗生剤は腸炎を併発しているときには使用することもありますが、たいていの場合はステロイドを主軸とした投薬で経過を見ていきます。
猫の場合はステロイドの副作用がほとんど見られないため、割と高容量で投与していくことも多くあります。
今回の猫も最初はやや高容量から開始し、今はかなり少ない量でも維持が出来ています。
状態は安定しているので、2か月おきぐらいの検査を行い、経過を観察しています。
今回の往診では行ってはいませんが、なかには難治性の膵炎もあるので、そのほかの免疫抑制剤などを使用していくこともあります。
ただ、膵炎を起こしていることが検査の数値上明白であっても、症状があまり強くない時には不要な投薬は見送り、抗アレルギー食などの食事療法を行い経過を観察していくこともあります。
猫の見た目から調子の判断をするのは難しいのですが、体重の増減や食事の量などを見ながら投薬を相談していきます。
何しろ、食欲のない猫に投薬するのは飼い主様にとってはかなりのストレスになると思うので、セカンドセレクトでは猫の慢性疾患にはできる限り無理な投薬をしなくてもいいように配慮して治療をすすめていきます。
まとめ
猫の膵炎は、最近ちょっと調子が悪いかなと思って健康診断をしたら見つかるケースもよくあります。
ただ、何もないかもしれないのにわざわざ動物病院に連れて行くのも負担が心配と思っていらっしゃる飼い主様には往診という選択肢もあります。
セカンドセレクトでは老猫の健康診断はよくお受けするご依頼内容の一つです。
もし少し気になることがあれば、いつでもご連絡ください。