猫の呼吸器の異常は、初期段階ではほとんどわかりません。
犬のようにパンティングをする動物ではないですし、行動も自分でそれなりに制御して動くからです。
ですので、猫が見た目に苦しそうな息づかいをしているようなときは、すでに症状として進んでしまっていることがほとんどです。
特に呼吸器疾患の中でも、胸水症は猫でよく起こる症状なのですが、飼い主様が異変に気付いたときにはかなりの量の液体が胸の中にたまっています。
今回はそんな猫の胸水症についてご説明したいと思います。
猫の胸水症の原因は?
猫に胸水がたまる理由はいろいろあります。
外に行く猫でよく多いのが膿胸と呼ばれるもので、野良猫とけんかをした際に胸をかまれ、胸腔内で膿がたまる病気です。
呼吸が荒くなるほか、食欲不振、発熱などが起こります。
また腎臓や肝臓、心臓などの障害による循環不全により胸水がたまる場合もあります。
この場合、胸水は無色透明で、症状も末期まで気づかないケースがほとんどです。
突然お腹で呼吸をし始めたり、ぐったり動かなくなって初めて気づくことも多く、多くの飼い主様が動物病院に来て初めてその病状に気気づきます。
また胸部に腫瘍ができるケースもあり、この場合は癌性胸水といって、細胞成分にとんだ濁った胸水がたまります。
ほとんどの場合、リンパ腫と呼ばれる血液の癌であることが多く、こちらも発見が遅れるケースも多くあります。
また稀なケースでは猫伝染性腹膜炎という伝染病や、リンパ管が損傷して起こる乳び胸と呼ばれる病気もあります。
免疫が絡むような胸膜炎と呼ばれる症状で胸水が溜まるケースもあり、割と多くの症例で原因が不明になることがほとんどです。
治療法
治療法は原因によって異なり、その予後も多く異なります。
膿胸の場合、ドレーンなどを用いて胸腔内を洗浄しながら抗生剤を使用して、細菌感染を抑えていきます。
多くの症例では予後は良く、後遺症も残すことはありません。
循環不全による胸水は、その原因となっている疾患を治療するのですが、治療に著効すること多くはなく、定期的に胸腔に針を穿刺して胸水を抜きながらの対症療法になります。
予後も悪いことも多く、ほとんどの場合は呼吸不全でなくなります。
癌性胸水の場合は抗がん剤を使用することで胸水をコントロールできることが多くあります。
多くの飼い主様が、その副作用の高さから愛猫に抗がん剤の使用をためらうケースが多いのですが、個人的な意見では呼吸が辛い以上の辛い問題はないと思うので、積極的に検討してみた方がいいと思います。
伝染性腹膜炎、乳び胸、胸膜炎などは、原因自体も追究することができないうえ、治療法も基本的にはないので、予後は著しく悪い疾患です。
胸水を穿刺しながら様子を見ていくしかないため、非常につらい状況が続きます。
できるだけの手厚い看護を行って、QOLの向上に努めるのが最良の治療だと思いますが、苦しんでいる猫をみていられない飼い主様も多く、安楽死を選択される方もいらっしゃいます。
自宅で行える管理法
自宅でできる治療と言えば、酸素吸入を行うことが優先的に検討していただきたいことです。
月額で4万円前後で酸素吸入器、専用のケージがレンタルできます。
ただ猫によってはケージの中に入れると逆に興奮して体調を崩す猫もいるので、様子を見ながら少しずつ慣れさせていくのがいいと思います。
胸水を抜去するタイミングは、自宅での呼吸数が非常に参考になるので、睡眠中の呼吸数は一日1回は計っていたほうがいいと思います。
1分間当たりの呼吸数が急激に多くなった場合は、胸水が許容範囲以上にたまっているサインにもなりますので、そういった場合に胸水を抜くために獣医師に連絡を取るのがお勧めです。
胸水を抜去するのは場合によってはリスクの高い処置になるため、最低限の数に抑えておくべきだと思います。
食欲や元気などの状態に加え、呼吸の回数などは非常に参考になるので、猫の不要な負担を軽減させるためにも、是非とも計測してあげてください。
まとめ
胸水はできるだけ静かな負担のかからない場所で抜去したほうがリスクは少なくて済みます。
そういった意味では往診にてご自宅で胸水の管理をする方が、リスクも負担も軽減できるのですが、ご自宅で胸水を抜去するのはかなり困難です。
セカンドセレクトでも往診のご依頼で多いのがこの胸水なのですが、ご自宅で胸水抜去はお勧めはしていません。
ただこれはどうなのだろう?と思った時に、電話ではなく直接自宅で獣医師が症状を確認できるのは大きなメリットだとは思うので、もし不安を抱えてらっしゃる飼い主い様がいらっしゃいましたら、お気兼ねなくお問い合わせください。