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2023-07-17

以前に比べると、保護された犬や猫の話題をよく耳にするようになりました。

動物愛護にかかわる法令も色々更新され、動物愛護という言葉の意味が一般的になってきているというのもあると思います。

実際、動物病院で診療を行っていると、保護された犬や猫を迎いれましたという飼い主様が多くご来院されます。

さすがに犬ではほとんどありませんが、保護した経緯として、猫の場合は道端で弱っている仔猫を保護したというケーズもよくあります。

こういった場合では、保護した動物の詳細がわからないため、何かしらの病気をもっているのか、事故などにあったのかなど定かでなく、不安になって動物病院に連れてくる方も多くいらっしゃいます。

今回はそういった保護した猫などでたまに見られる横隔膜ヘルニアについてご説明したいと思います。

横隔膜ヘルニアとは

横隔膜は胸部と腹部を分ける、非常に強靭な筋膜です。

横隔膜によって肺や心臓などの胸部の臓器は胸腔内に、腸や肝臓、腎臓などの腹部の臓器は腹腔内に収まることができます。

ただ当然と言えば当然なのですが、横隔膜によって完全に胸部と腹部が隔絶されているわけではありません。

食道は頭部から胸腔内を通って腹腔内にある胃につながりますし、心臓からでる血管は腹腔内を含め全身にはりめぐっています。

そのため横隔膜には食道や大血管を通すための隙間が存在しています。

普段はこの隙間は食道や血管以外が通ることができないように隙間がしっかりと閉じているのですが、横隔膜ヘルニアはこの隙間が何らかの原因で大きくなってしまい、主に腹腔内の臓器、肝臓や腸が胸腔内に入り込んでしてしまう病気です。

横隔膜ヘルニアの原因と症状

横隔膜ヘルニアの原因は外傷性もしくは先天性のものがあります。

多くの場合、交通事故が外傷性の横隔膜ヘルニアの原因です。

ただ最近では都内では飼い犬が交通事故にあうケースはほとんどなく、マンションなどで飼われている猫がベランダから落下してまったケースか、先天性の横隔膜ヘルニアが原因であることが多いと思います。

個人的な経験で言えば、保護した猫が先天性横隔膜ヘルニアを起こしていたケースがほとんどで、外傷性の横隔膜ヘルニアの経験は数えるほどしかありません。

横隔膜ヘルニアの症状としては、外傷の場合、そもそも横隔膜ヘルニア以外の損傷もあるため、意識が混濁していたり、疼痛でパニックになっていたりするので、みための状況は一定ではありません。

先天性の場合、食欲や元気はあることが多いのですが、呼吸が速く、またお腹で息をしているような見かけになります。

横隔膜ヘルニアはレントゲンで容易に診断がつくので、もし保護した猫の呼吸に不安を感じたら、動物病院でご相談ください。

上は正常な猫のレントゲンです。

こちらは同じ猫が横隔膜ヘルニアを患っていたころのレントゲンです。

横隔膜に大きな穴が開いており、腹腔内の臓器が胸部に入り込んでいるため、胸部と腹部の境目がほぼわかりません。

治療法は?

原因が外傷性であっても、先天性であったとしても手術が唯一の治療法になりますが、一般的には手術は緊急的にやる必要はないとされています。

特に先天性横隔膜ヘルニアの場合は、仔猫の時に判明することが多いのですが、その場合は成猫になるまで待って避妊手術などと一緒に行うことが多いと思います。

外傷性の場合も、事故の影響がどう出るかはっきりしないことが多いので、受傷後2,3日様子を見てから手術の検討に入ることがほとんどだと思います。

手術は胸腔内に逸脱している臓器をおなか側から牽引して引っ張り出し、その後横隔膜に存在している孔を縫合して閉鎖します。

写真だとわかりにくいのですが、腹部から逸脱した肝臓と心臓がヘルニアの巨大な穴を通して確認することができます。

通常横隔膜は非常に強い筋膜でできているのですが、横隔膜ヘルニアを起こしている横隔膜は薄く裂けやすいので、縫い合わせる方向など色々考えながら縫合する必要があるので、縫合するだけとは言っても割と気を遣う手術だと個人的には思います。

術後の予後について

外傷性の横隔膜ヘルニアの場合、その事故による損傷の具合にもよるとは思いますが、術後24時間以内の死亡率は30%と言われています。

先天性の横隔膜ヘルニアの場合のリスクを調べている文献はあまりなかったのですが、臓器を元に戻すときに起こる血流や血圧の変化や血栓の発生、また術後に発生する不整脈などのリスクもあるため、他の手術と比べてもリスクやや高くはなると思います。

一般的には術後24時間以上たてば予後は良いと言われています。

呼吸の状態も目に見えて回復しており、非常に生活の質も改善され、通常の生活を送ることが可能になります。

まとめ

呼吸がつらそうにしている犬や猫を見るのは、飼い主様側としても見てられないぐらい不安になると思います。

あれっと思った時にはいつでもお気兼ねなくご相談ください。

2021-11-04

肛門から出血があるというご相談は割とよく受けることがあります。

若い犬で多いのは、便に出血がついていたというご相談です。

ほとんどの場合、病的な問題は絡んでいないことが多いので、よほど下痢などしていなければ、ご様子を見ていただくことがほとんどです。

一方で中高齢機以上の犬の場合は少し様子が異なります。

便に出血が混じるというご相談も受けるのですが、「肛門付近にしこりが出来て、そこがすれて出血している」というご相談が多いと思います。

特にオス犬には多いのですが、高齢になると肛門にいくつかの種類のしこりが出来ることがよくあります。

今回はその代表的なしこりの一つ、肛門周囲腺腫についてご説明したいと思います。

肛門周囲腺とは?

肛門の周りには無数の分泌腺がありますが、肛門周囲腺はいわゆる肛門腺とは別物になりますので、下記を参考にしてください。

【肛門嚢炎・肛門周囲瘻】犬や猫のお尻が腫れる病気。ある日突然肛門のわきから膿が出たら?

肛門周囲腺は肛門の周囲にある分泌腺のことで、年を取ると肛門周りが黒くなったり、ぶつぶつが出来たりするのはこの肛門周囲腺が変化したものです。

はっきりとした役割はわかっていませんが、雄性のホルモンの影響を受けることから、肛門腺同様、自分のテリトリーを誇示するための臭い付けの分泌腺だと考えられています。

肛門周囲腺腫とは?

肛門周囲腺腫はその名の通り肛門周囲腺が腫瘍化することで起こります。

先ほども書いた通り、雄性ホルモンの影響を受けるため、発生には明確な雌雄差が見られます。

一般的には未去勢の中高齢のオス犬によくみられるもので、ある日お尻を見てみると豆粒大の小さなしこりが見つけて心配になりご来院する方が多いと思います。

基本的には良性の腫瘍だと言われていますが、メス犬に発生した場合は悪性のケースもあると言われています。

ほとんどの場合は急激に大きくなることはなく、気づいたらじんわりと出血をしていたり、かさぶたになっていることがほどんどです。

犬自身も少し気にする様子もあるため、何かしらの対応が必要になることも多くありますが、大出血をしたり、感染を起こしてひどい状態になることはほとんどないので、そこまでの心配はいりません。

手術は必要?

肛門周囲腺腫は腫瘍なので、薬でなくなることはありません。

基本的には手術による摘出が唯一の根治治療になります。

この際に、去勢手術を行っていないオス犬であれば、去勢手術を一緒に行うことで再発率を低下させれることが出来ます。

手術は表層に出ているようなしこりであれば摘出は非常に簡単です。

たまに表層ではなく、肛門の周囲の筋肉に埋もれているようにしこりが発生している場合もあり、この場合は慎重に対応する必要があります。

肛門の周囲には神経が集中しており、しかもそれは非常にわかりにくいため、術中に気づかないうちに損傷をさせてしまうことで、一時的かもしくは永続的な肛門の麻痺が起こる可能性があるからです。(めったにはないのですが・・)

ただし、実際の臨床現場では、肛門周囲腺腫のご相談は手術が出来ないような年齢の犬が多いこともあるので、手術をせずに普段のケアで様子を見ていただくことも多くあります。

どんなに簡単な手術でも基本的には全身麻酔になるのが難点だからです。

何回か経験があるのですが、表層が自潰した肛門周囲腺腫の管理がどうしてもうまくいかない超高齢犬を、局所麻酔で手術したことがあります。

基本的には再発性もあるのであまりお勧めはしていないのですが、どうしても何とかしたい、でも麻酔はかけたくないという飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもご相談くさい。

様子を見ていたら巨大化した!?

肛門周囲腺腫に似たような場所に起こる腫瘍で、アポクリン腺癌というものがあります。

こちらはいわゆる肛門腺の腫瘍になりますが、肛門周囲腺腫に比べ悪性度が極めて高く、周りのリンパ節にも転移を起こす厄介な癌です。

大きさもかなり大きくなることもあります。

見て目ではあまり区別がつかないことも多いので、肛門腺がある場所に何かしらのしこりが出来た場合は、細胞の検査までは行った方が無難だと思います。

まとめ

自分の飼っているペットの肛門をまじまじと見る機会はないと思いますが、割とお尻を拭く機会は多いと思います。

お尻を拭いた時にふと出血に気づき、肛門にしこりがあることに気づいたら・・・慌てる必要はありませんが、いつでもご相談に来てください。

2021-10-11

おそらくほとんどの獣医師が「奇形」という言葉にはかなり過敏に反応すると思います。

大抵の場合、奇形はかなり幼い時期に発見されるため、色々な問題をはらんでくるからです。

一言で奇形と言ってもいろいろありますが、その後の一生に影響を及ぼすような重篤な奇形もありますし、あまり気にしなくてもいいレベルのものまで多様にあります。

最近では動物を取り扱う人たちのリテラシーもかなり向上し、飼い主様へ幼いペットを引き渡す際に、幼少期にみられる異常や奇形についてはかなり詳しく説明することが一般的になりました。

そういった若いペットでみられる奇形の中で、もっともポピュラーな奇形の一つが臍ヘルニアと呼ばれるものです。

一般的にはでべそと言われるこの奇形は、あまり重篤な奇形にはなりえませんが、なんとなく気になる奇形です。

今回はこの臍ヘルニアについてご説明したいと思います。

臍ヘルニアってそもそも何?

臍ヘルニアは一般的には「でべそ」という言葉で知られており、人間でもよくみられるものです。

胎児のときにはへその緒で母体と胎児がつながれていますが、出生時には胎盤とともに切り離され、時間とともに新生児にはへそが出来るようになります。

この時、皮膚の下の腹膜はへその形成時にしっかり閉じるのですが、脂肪やその他の腹腔内の臓器がへその周囲の組織に癒着し完全に腹膜が閉鎖しないため起こります。

大きさは豆粒大のものから親指大までさまざまですが、中にはピンポン玉大ぐらいの大きさのものまであります。

ただ、臍ヘルニアが大きいからと言って何かしらの症状が出てくることは極めてまれです。

治療法は?手術をしないとどうなる!?

人間の場合、臍ヘルニアが見られたとしても、小学校に上がる前までには自然と治癒することがほとんどで、無治療のケースが多いとされています。

また人間の新生児で臍ヘルニアが見られた場合は、テープを貼って穴を縮小させ治癒をはやめていくなどの方法をとることもあるそうですが、犬や猫の場合では一般的ではなく、基本的には手術が唯一の治療法となります。

一般的に臍ヘルニアはでべそを押すと腹腔内にすべて還納し引っ込んでしまうタイプと戻らないタイプがあります。

戻らないタイプのヘルニアを嵌頓ヘルニアと呼ぶこともあり、飛び出た組織が血流障害を起こす可能性があるため、早めに手術をした方がいいと言われています。

ぼく個人では嵌頓をおこした臍ヘルニアだったとしても、体調に影響が出るほどのものは経験がありませんが、たまに内出血を起こし、押すと痛がるようなしぐさを見せることもあるので、やはり嵌頓タイプの臍ヘルニアは手術をした方がいいと思います。

還納するタイプの臍ヘルニアも、いきなり嵌頓タイプになることもあるので、よほど麻酔のリスクが高いというわけでは無ければ、手術をすることをお勧めしています。

ただし、先ほども書いた通り、自覚症状が出ることはかなりまれなため、それほど早急に手術を受ける必要はありません。

大抵の飼い主様は、避妊や去勢手術を行う時に同時に行う方がほとんどで、臍ヘルニアの整復のみの目的で手術を行うことはあまりありません。

手術は難しい?

手術はあまり難しいものではありません。

臍ヘルニアは腹膜と癒着しているため、癒着をはがし、腹壁をきれいに縫い合わせるだけです。

腹腔内から飛び出しているものは、ほとんどが脂肪組織なので、出血も多くはありません。

手術のご費用は程度によってまちまちですが、セカンドセレクトでは避妊手術や去勢手術に合わせて行うのであれば追加のご料金として5000円から10000円程度頂いています。

ただ、避妊手術と同時に行う場合、避妊手術の切開腺と臍ヘルニアを整復する為の切開腺は別々なため、大抵は1つの大きな切開腺となり、飼い主様が想像しているよりも術創は大きくなると思います。

術創の大きさによって術後の回復や抜糸が遅れることはありませんが、見た目は少し痛そうです・・・。

まとめ

獣医学的には臍ヘルニアはそれほど重要な位置づけの病気ではなりませんが、それでもあっていいものではありません。

お腹を触ってみてポコッとしたものに気づかれたら、お気軽にご相談ください。

2021-09-27

眼というのは多くの神経が集中している感覚器です。

そのため眼にちょっとゴミが入っただけで強い異物感を感じてしまいます。

一方で、犬や猫は人間に比べると極端に瞬きをしないためか、よく糸くずや毛などのごみが目に入っているのにもかかわらず、全く気にすることはありません。

そんな犬や猫でも、目の表面に傷までできてしまった場合は、明らかな症状を訴えます。

涙が多くなったり、目が赤く腫れぼったくなり開かないような症状がみられることが多いと思います。

犬や猫の目の表面である角膜にできた傷は、人間よりも深くできている場合も多く、治癒に相当な時間がかかることがほとんどです。

今回は犬や猫の角膜損傷についてご説明したいと思います。

犬や猫はなぜ角膜損傷が起こりやすい?

角膜損傷は犬や猫で起こる目の病気の中で最も起こる症状の一つだと思います。

その発生の頻度は人間のそれよりも多く発生し、その損傷範囲も非常に大きいものであることがよくあります。

犬や猫の角膜は人間の角膜よりも非常に大きいというのが、傷つきやすい一つの原因だと思います。

犬や猫の角膜に傷がつく原因としては外傷性であることがほとんどなので、とくにチワワや短頭種のように目がせせり出しているような犬種であればなおさら角膜損傷は起こりやすいと思います。

角膜損傷が起こるタイミングは散歩の後やトリミングの後などといったわかりやすいこともありますが、大多数はいつ起きたかわからないといったようなことがほとんどです。

角膜表層の損傷

角膜は4層(5層)に分かれるのですが、表層の損傷は動物病院ではよくみられるものです。

角膜損傷を起こした犬や猫は割と強い疼痛と羞明感とともに結膜が赤く腫れあがったり、涙の量が多くなったりします。

損傷が表層だけにとどまっている場合は、肉眼的に目に傷があるかどうかはわからないため、染色液を用いて傷の有無を確認します。

セカンドセレクトではフローレス紙試験と呼ばれる染色方法を用いて簡易的に角膜の損傷を確認します。

角膜表層の損傷は抗生剤を含む点眼薬や傷の損傷を癒す点眼薬などで十分回復することが出来ます。

ただ、短頭種などの角膜損傷は治りにくいことが多いと思います。

その理由としてこれらの動物の角膜損傷の理由の一つとしてドライアイによるものが多く、その根本を治すことがなかなか難しいからです。

また短頭種の特徴として、角膜表層に存在する神経の数が少なく、目の表面にある異物感に対し鈍感であるため、角膜にできる傷が広範囲であることがよくあります。

こういった症例では随時点眼薬が必要となるため、飼い主様のケアの一環として点眼をしていただくといいと思います。

角膜深相の損傷

角膜の深層まで傷ついてしまった犬猫は、見た目で見える症状は意外と軽いことが多いと思います。

これは目の表層よりも神経の侵入が少ないためなので、決して病状が軽いというわけでは当然ありません。

角膜深層まで達した損傷はその治癒まで非常に長い時間がかかります。

角膜深層まで損傷が達した目の表面はうっすら白くもやがかかったように見え、結膜は強く充血しています。

点眼などの内科的治療で治癒することも多いのですが、動物ゆえに目をこすり悪化させるとか、2次的にドライアイになってしまいさらに傷の治癒が遅延することもあります。

こういった場合は瞬膜フラップと言って眼の内側にある膜を引っ張り眼瞼と縫い合わせ、目の傷を保護するという処置を行います。

通常2週から3週間ほど被膜をかけた状態にて傷がいえてくるのを待ちます。

瞬膜フラップを行うためには全身麻酔が必要なのですが、しばしば麻酔がかけられないような高齢な場合もあるため、セカンドセレクトでは眼瞼フラップという処置を行うこともあります。

全身麻酔を使用せず簡易的に眼瞼を縫い合わせ目を保護できるのですが、瞬膜フラップに比べると強度が弱いため、一般的にはあまり推奨される方法ではありません。

角膜の深層まで届いた傷は時にデスメ膜瘤と言われる小さなしこりを形成します。

デスメ膜は角膜の最深層にある膜にあたり、非常に弾力性に富んでいるのですが、角膜の外層部が損傷によって欠落し、目の圧に負けてしまい小さな水風船のように膨らんでしまいます。

そのためデスメ膜瘤が見られた眼球は破裂をする恐れがあるため、外科的な介入をおこない、欠損した角膜を縫合したり移植を行ったりする必要があります。

セカンドセレクトでは角膜の移植に関しては専門病院をご紹介していますので、治癒に時間がかかりすぎている感じがする等のご不安がある飼い主様がいらっしゃいましたら、お気兼ねなくご相談下さい。

まとめ

顔の中でも目はかなり目立つ存在ですので、目の異常には飼い主様もすぐに気づくことが多いと思います。

何気なく顔を見たときに、片目がやけにつむっているなと思ったら・・・いつでもご来院ください。

2021-09-19

最近の傾向として、ペットショップでペットを購入した場合、膝蓋骨脱臼や水頭症など様々な先天性の疾患について、注意事項を添えられて販売するケースが多くなったと思います。

もちろんそのほとんどが特に治療の必要もないのですが、飼い始めの飼い主様にとってはよくわからないということもあり、心配になって受診されるケースが多くなってきました。

そういった販売当初に添えられたコメントの1つに鼠経ヘルニアという項目があり、まぁまぁな割合で軽度の鼠経ヘルニアという注意書きを目にすることがあります。

今回はそんな鼠経ヘルニアについてご説明したいと思います。

鼠経ヘルニアとは

基本的に鼠経部は太ももの付け根にあります。

鼠経部は主に2つの薄い筋肉と1つの靭帯で構成されており、その3つの重なった場所にはわずかな隙間があり、その隙間から動脈や静脈、リンパ管や神経などが腹腔内から太ももの内側へ走行しています。

鼠経ヘルニアは本来であれば非常に狭い隙間が、何らかの原因によって大きい隙間になって腹腔内から、腹腔内脂肪などが皮下に出てしまうことを指します。

たいていの場合は先天性のことがほとんどだと思います。

鼠経ヘルニアの症状は?

基本的にどの犬や猫も鼠径部からは少量の腹腔内脂肪が出ています。

一方で鼠経ヘルニアと言われる個体は、明らかに腹腔内から出てくる脂肪の量が多く、たいていの場合は左右の鼠径部の見た目は大きく異なっています。

鼠径ヘルニアによって腹腔内から出てくるものは脂肪だけでなく、隙間が大きければ腸や膀胱なども出てしまうこともあります。

ただ鼠経ヘルニアとして臓器が逸脱しているだけであれば特に症状が出ることはありません。

特に脂肪だけであれば症状が出ることはめったにありません。

問題は腸や膀胱が腹腔内から出ている場合です。

もちろん、腸や膀胱が出ているからと言って必ずしも症状が出るわけではないのですが、出ている臓器の状況によっては、腸閉塞や尿道閉塞を起こすこともあります。

特に膀胱が逸脱している場合は、長年問題なくても膀胱に尿が貯尿している状況によって突然閉塞を起こすこともあるので注意が必要です。

またこれらの症状が出てしまう確率は、陥頓と言って飛び出した臓器を指で押しても押し戻されないような状態のときは圧倒的に高くなるため、膨らんでいる場所が固くなっているようであれば早めに受診する必要があります。

以前に見た症例では鼠経ヘルニアとして子宮が脱出していた上に、その子宮が子宮蓄膿症になっていたなんてこともありました。

手術は必要?

色々な意見はあると思いますが、手術は前向きに検討しておいた方がいいと思います。

理由としては、同じヘルニアでも会陰ヘルニアとはことなり、手術後に再発するリスクがかなり低いからです。

もちろん、発見次第すぐに手術を行う必要は必ずしもないのですが、特に飼育開始時からあるような鼠経ヘルニアであれば、ほとんどの場合、避妊手術や去勢手術と同時に行うことをお勧めしています。

また、腸や膀胱が逸脱しているような場合も、何かしらの症状が見られる前に手術をすることをお勧めしています。

手術は飛び出している臓器をおなかの中に戻したうえで、再度出てこないように鼠径部の隙間を縫合する手術になります。

1文で説明すると簡単なように思えますが、鼠径部から飛び出ている臓器は周りの組織と癒着しているため、注意をしながら剥離しないといけません。

また鼠径部には太い血管が存在しているため、隙間を縫合するときなどは割と手間がかかるので、大きな鼠経ヘルニアでなくても少し手術時間がかかることもあります。

とはいいつつも、鼠径ヘルニアは自然治癒で治るということはなく、治すためには手術が必要であるため、手術自体にリスクがない場合には、手術をした方がいいと思います。

まとめ

犬や猫を飼育始める時には色々な不安があると思います。

セカンドセレクトではそういった飼い主様の不安を少しでも和らげてあげられるような診察を目指しています。

もし何かお困りのことがありましたら、いつでもお気兼ねなくご相談下さい。

2021-06-28

ジメジメとした時期になると、どうしても自分の汗は気になるものです。

人間は他の動物に比べると汗腺が発達しており、体温調節に大きく貢献している一方で、汗のにおいや服のシミなどの原因にもなります。

一方で犬や猫はというと、一般的には汗をかくことができないと知られており、緊張の際に出てくる肉球の汗しかかくことはできないと思われています。

ただ実際には犬や猫にも全身に汗腺は存在しており、皮膚の恒常性を保つための様々な機能を有しています。

今回ご説明したいのは犬の汗腺で起こる病気、多汗症についてです。

犬の汗腺とは?

多くの飼い主様がご存じかもしれませんが、汗腺は2種類が存在しています。

人間の場合はいわゆる汗と言われるものを分泌するエクリン腺と、緊張すると腋の下などから分泌される緊張汗を作るアポクリン腺に分けられます。

エクリン腺は単独で皮膚に存在しているため、分泌される液体には汗以外の成分は含まれないので、臭いはほとんどありません。

一方アポクリン腺は毛穴に存在しているため、毛穴の中の皮脂腺から出てくる脂と混ざって分泌されますが、もともとは臭いはそれほど強くありません。

よく言われる汗の体臭というのは、汗と一緒になって皮脂腺から出てくる脂に細菌が繁殖して発生するものです。

感染を起こした皮脂腺がアポクリン腺から出てくる汗と混ざり、むぁっとした独特の汗の臭いになります。

犬はもともとアポクリン腺がほとんどであるため、健康体でも犬個体の臭いが感じられます。

特に何かしらの皮膚病が原因となって細菌が繁殖した場合は、独特な臭いが発生します。

犬の多汗症とは?

犬の多汗症はアポクリン腺から分泌される汗の量が増えることで起こる疾患です。

多汗症を調べるための検査などは特になく、これが多汗症です!と言えるような特徴的な症状もありません。

ヨークシャテリアやシュナウザーに多いと言われています。

ただ経験則から、多汗症を起こしている犬はべたつきのない湿った皮膚をしており、過剰にアポクリン腺から水分が消失しているので、皮膚をつまむとコシがなく、薄くビヨーンと伸びる感じです。

被毛は全体的に薄く、やはり湿っぽい感じなるのですが、べたつきはあまり感じられません。

多汗症の治療は?

多汗症に対するこれといった治療法はなく、スキンケアをしていくことが必要となります。

セカンドセレクトではこういった皮膚病を持っている犬には、ペプチドコラーゲンや亜鉛やビオチン、また抗酸化作用のあるコエンザイムやω3を含んだサプリメントをお勧めしています。

また多汗症の犬にはシャンプーも重要です。

シャンプーは脱脂作用の少ない低刺激性のシャンプーを使用し、かつできるだけ低温のシャワーで洗い流すことをお勧めしています。

シャンプー後はセラミドのような保湿成分を使用することもいいと思います。

多汗症の多くの犬で、アレルギー性の皮膚炎を併発しており、内股や腋の下は背中側の皮膚と違い、黒ずんだ色素沈着をおこしていることがあります。

逆に皮膚が肥厚しているようなところも見られます。

もともと多汗症の犬は皮膚の保水能力が低く、皮膚の免疫バリアが破綻しやすくなっています。

そのため時期によってはアレルギー性皮膚炎由来の細菌感染をおこしたり、慢性的な掻痒感を訴えたりするので、抗生剤やかゆみをコントロールするような治療を並行して行うことが多いと思います。

こういったことを日々継続していても、完全に治癒することは難しく、結果として長期的な治療になることがほとんどです。

まとめ

多くの皮膚病はその原因が分かったとしても完治することのない慢性的な疾患です。

セカンドセレクトでは皮膚病の専門医と連携を取りながら治療を進めています。

もし何か皮膚のトラブルでお困りのことがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

2021-03-02

ものもらいという病気は誰もが聞いたことがあると思います。

突然、目のまわりが腫れてただれてしまう病気は人間ではよく見られる病気です。

一方で犬でも目の周りが腫れてしまう病気はあるのですが、人間とはちょっと違う理由で起こることがよくあります。

今回は犬でたまに見られる病気、免疫介在性眼瞼炎についてご説明したいと思います。

眼瞼炎とは?

眼瞼炎はその名の通り、眼のふちにあるまぶたの炎症で犬ではよく見られるのですが、猫ではまれのことが多いと思います。

教科書的には細菌の一次感染やアレルギーによっておこることが多いと言われていますが、意外と自己免疫性疾患に起因したもの多いと思います。

ちなみにものもらいは眼瞼にあるマイボーム腺と呼ばれる場所に細菌が感染を起こすことで起こります。

最初は片目の眼瞼のふちが腫れているところから始まり、多くの場合、数日で両目の上下眼瞼が腫れあがります。

症状が進むと腫れていいた眼瞼が自壊し、目のふちにはかさぶたが常時付着しているような状況になります。

眼瞼のふちはいたたまれないほど腫れあがるのですが、意外と犬自体にはかゆみも痛みもなく、食欲なども低下することはありません。

また同様の症状がそのほかの体の部分に出てくることはほとんどまれで、眼瞼のみに見られる局所的な免疫異常と考えられています。

治療法は?

治療に関してはもっぱら免疫抑制のためにステロイド剤やそのほかの免疫抑制剤を使用します。

これらの成分が入っている眼軟膏にて治癒することもあるのですが、ほとんどの場合には外用薬のみでは治癒に至らないことも多く、内服による投薬を必要とすることも多いと思います。

治癒経過が順調であれば、投薬を開始して2週間ほどでほぼ元の状態に戻りますが、投薬を中止すると再発することもあります。

この場合はステロイドや免疫抑制剤が副作用の出ない程度の維持量で継続する必要があります。

まとめ

眼瞼以外には症状は見られず、犬は普段通りとはいいつつも、眼はとても目立つ場所にあるため、見た目はとても痛々しいものになります。

もしある日、飼っている犬の眼を見たときに、ちょっと腫れているかもと思ったら、いつでもお気兼ねなくご相談ください。

2021-02-14

猫に比べると、「犬が足を痛がってびっこを引く」という症状で動物病院に来ることは多いと思います。

たいていの原因は、運動負荷に関節が耐え切れずにびっこを引くことが多いのですが、まれに骨自体に病変部がありびっこを引くこともあります。

今回はそういった骨自体にできる病気の中で、割とよく見られる腫瘍の骨肉腫についてご説明したいと思います。

骨肉腫とは

骨に発生する腫瘍にはいくつかありますが骨肉腫はもっとも発生頻度も多く、また悪性度も極めて高い腫瘍です。

骨肉腫が発生する場所は主に四肢が多く、また「肘から遠く、膝に近い」足に病変部があることがほとんどです。

ただ腫瘍自体は足だけでなく、体幹の骨やあごの骨など全身の骨のどこの部分でも発生する可能性があります。

また、小型犬よりも大型犬の方が病気になる確率が高いと言われています。

骨肉腫は1歳程度の比較的若い犬もしくは8歳前後のシニア層になったばかりの犬に見られることが多く、通常はびっこ度合いが強まったり、治ったりを繰り返しながら症状が進んでいきます。

ある程度症状が進むと足を触った時に腫れていることに気づくこともあり、また同時に食欲不振や倦怠感などが見られることもあります。

検査方法は?

足にできた骨肉腫の場合、典型的なレントゲンの画像が得られることによって、比較的簡単に診断を下すことができます。

もちろん骨肉腫の確定診断には、他の腫瘍と同様に採取した細胞で病理診断を行う必要があるのですが、骨の腫瘍は非常に硬く、普通に注射針を使用してもうまく採取できません。

骨肉腫の細胞を採取するには、それなりの太い針によって吸引するのですが、骨肉腫を起こしている骨はもともと病的骨折をしやすくなっているので、採材後に骨折するリスクがあります。

 

ですので結果的には、レントゲンで仮診断を行い、手術をおこない切除した組織を術後に検査を行うことがほとんどだと思います。

また骨肉腫は肺への転移も多くみられるため、骨肉腫の仮診断が下った場合は胸部のレントゲンもしくはCT検査が必要です。

治療法は?

治療法についてはもっぱら外科手術になります。

ただ、普通の腫瘍を切除する手術と異なり、腫瘍の発生部位が骨であること、また悪性度が高いことから切除部位は広範囲、具体的に言えば、四肢にできた骨肉腫であれば断脚が基本です。

またあごにできた骨肉腫であれば顎切除になります。

抗がん剤治療もある程度有効とされていますが、基本的には外科手術を併用するため、投薬だけで病状をコントロールすることは非常に困難です。

切除不可能な場所に発生した骨肉腫の場合、放射線治療などの必要もあることもあります。

放射線治療に関しては都内であれば、以前に比べると受診しやすくはなっていますが、まだ一般的な治療とは言えない状況です。

【グリオーマ】犬でよく起こる脳腫瘍。ペットの放射線治療の実際とは?

骨肉腫の治療において最も厄介な点は、腫瘍自体が強い疼痛を引き起こすということです。

最初の段階ではびっこ程度で済むのですが、症状が進行すると激しい疼痛のため、嗚咽のような声をあげたり、威嚇行動をとったりと、犬だけでなく飼い主様にも非常に負担がかかるものになります。

飼い主様によっては安楽死も視野に入れる方がいるほど、終末期には苦しい思いをする仔もいるため、病気としては色々な意味で、重たい病気だと思います。

まとめ

セカンドセレクトでは様々な腫瘍を患った仔達が来院されます。

こういった悪性度の高い腫瘍になってしまうと、飼い主様自身の悩みも大きくなるとおもいますが、できる限り負担の少ない治療をご提案させていただきますので、何かお困りの際はお気兼ねなくご相談ください。

2021-01-25

人間の子供も手のかかることは多いと思いますが、仔猫や仔犬も勿論、色々と手がかかります。

さっきまで元気だったと思ったら、突然調子が悪くなっている・・・こんなことを経験した飼い主様は多いのではないでしょうか?

仔犬や仔猫の体調不良の中で大きく占めるのが下痢や吐き気です。

ほとんどの場合は一過性で終わってしまうのですが、まれになかなか治らず、急速に衰弱していくこともあります。

こういったなかなか治らない下痢や吐き気の一つに腸重積というものがあります。

今回は特に若い犬で多い腸重積についてご説明したいと思います。

腸重積とは?

腸重積は腸の一部が何らかの理由で腸の中に陥入する病気です。

ひも状の異物により物理的に重責を起こしている場合もあれば、消化管内の寄生虫やそのほかの原因により、慢性的な腸炎を引き起こしているような仔犬に多いとされていますが、特定の原因が見つからないことも非常に多く、また比較的若い猫でも見られる病気です。

腸重積を起こした犬や猫はあまり投薬による治療に反応しない、もしくは一度よくなったと思ってもすぐに再発するような下痢、嘔吐などが見られます。

食欲不振もよく見られる症状なのですが、わりと体調に波があることが多く、しばしば診断に苦慮することもあります。

典型的な症状の場合、腹部を入念に触診すると腸の一部が固くなっているような場所を見つけることができるのですが、犬の場合などは腹部の疼痛により腹圧が上昇し、あまりうまく触知できないことがあります。

レントゲンでも診断がつくこともあるのですが、はっきりとした画像が得られないことも多く、バリウム検査でも完全な閉塞所見が見られないため、これらの検査ではあまり診断がつけられないことが多いと思います。

診断にはエコー検査が有用ですが、基本的にエコー検査は病変部を検索するのには適していないため、触診で疑わしい箇所が見つからなかった場合にはなかなか診断をつけるのは容易ではありません。

結局のところ、多くの場合では犬や猫の年齢、病状などから仮診断を付けていくことが多く、後付けで検査や治療を行っていくことがほとんどです。

治療法は?

基本的には外科手術が唯一の治療法になります。

腸重積を起こしている腸の箇所は、重積部を解除したときにあまり損傷がないように見えたとしても、高い確率で再陥入をおこすため、重積が見られている腸を切除し、正常な腸同士を吻合する必要があります。

手術後の調子は速やかに回復することが多いのですが、2日から3日程度の絶飲絶食が必要なため、基本的には入院が必要になります。

手術のリスクとしては腸の吻合手術はまれに癒合不全を起こし、術後の状態を悪化させることもあります。

また腸重積を起こす特定の原因がみあたらないことが多いので、手術後に別の箇所で再発することもあります。

こういった様々な手術のリスクはあるのですが、手術以外には治癒する方法がないため、飼い主様にとっては苦渋の選択になると思います。

まとめ

家に来て間もないような若い犬や猫が調子をいきなり崩すことはよくあるのですが、飼い主様も初めての経験であることが多く、迷われることも多いと思います。

セカンドセレクトでは軟部外科を中心に様々な外科手術を行っていますので、何か異変を感じた際はいつでもご来院下さい。

2020-12-19

一般的に腫瘍は体の全部の細胞で発生する可能性があるのですが、その中には見つけやすいものもあれば、見つけにくいものもあります。

腫瘍が見つかりにくい理由としては、外見上からは判断しにくい、細胞を採取しにくいなどの理由があげられますが、脳腫瘍はその両方の困難さを持っているので、特に動物病院では発見が遅くなります。

今回は脳腫瘍の中でも比較的よくみられる髄膜腫についてご説明したいと思います。

髄膜腫とは?

脳を包む膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜と3層に分かれているのですが、髄膜腫はこのうちのくも膜から発生した腫瘍になります。

動物病院で見られる脳腫瘍のほとんどは、リンパ腫や乳腺腫瘍からくる転移巣がほとんどですが、原発性の脳腫瘍もほとんど見られます。

髄膜腫以外の脳腫瘍としてはグリオーマと呼ばれる腫瘍が、主に特定の犬種でよく見られます。

【グリオーマ】犬でよく起こる脳腫瘍。ペットの放射線治療の実際とは?

グリオーマに比べると髄膜腫は犬や猫のの場合、良性の腫瘍であり、進行はかなり緩慢だと言われています。

ただし、特に犬の場合は脳と腫瘍の境があまり明確でないのと、発生場所が頭蓋内であるため、良性とは言いつつも治療はしにくく、また痙攣や行動異常などの神経的な症状が強く起こるのが特徴です。

検査の方法はある?

先ほども書いた通り、脳腫瘍は発見が非常に困難であるため、飼い主様が何かしらの症状に気づいたときには、かなり腫瘍の大きさがかなり大きくなっていることがほとんどです。

検査方法は一般的な血液検査やレントゲン検査では腫瘍の存在を明らかにすることはできないため、全身麻酔下でのMRIを用いた画像診断になります。

通常、腫瘍の診断は腫瘍の細胞を採取し、病理検査を行うことでどのような腫瘍なのか、また悪性度を調べるのですが、ほぼすべての頭蓋内腫瘍についてはなかなか腫瘍細胞を採取することは困難になります。

髄膜腫の場合も、診断はMRIによる画像診断のみで行われることがほとんどで、この点については他の腫瘍とはかなり異なる点だと思います。

画像のみの診断にはなるのですが、髄膜腫の場合は髄膜から発生しているので、脳の辺縁にべったりついているような特徴的な画像になるため、熟練した獣医師であれば予想するのは容易だと思います。

治療法は?

最も積極的な方法としては外科手術および放射線治療となります。

ただし頭蓋内の手術ができる病院は限られており、また以前に比べると放射線治療を行える施設も都内であれば増えては来ていますが、まだまだ一般的にはなっていないのが実情です。

代替の方法としては抗がん剤などの使用がありますが、髄膜腫にはあまり効果が見られないため、推奨される方法ではありません。

結果としてたいていの場合は、腫瘍によっておこる痙攣や発作のような症状をコントロールする温存療法にとどまることがほとんどです。

抗痙攣薬や脳圧降下剤、ステロイドなどが代表的な薬になります。

他の脳腫瘍に比べると髄膜腫は進行がかなり緩慢なため、温存療法とは言いつつも犬や猫によってはかなり長期的なコントロールが可能になります。

ただ残念ながら完全に進行を止めることはできないため、徐々に痙攣の頻度が増え、それに伴い食欲不振や衰弱が見られるようになります。

中には痙攣が完全に制御できないケースもあるため、良性の腫瘍とは言いつつも、決していいものではないことは確かだと思います。

まとめ

人間の場合でも脳腫瘍は治療が困難なもののひとつであり、犬や猫の場合はなおさら難しいと思います。

セカンドセレクトでも様々な神経症状を患い、日々奮闘していらっしゃる飼い主様も多くいらっしゃいます。

治せない病気だったとしても、日々の生活を穏やかに過ごせるような、何かしらのお手伝いは可能だと思いますので、何かお困りの際はお気兼ねなくご相談ください。

2020-11-29

以前から一定数はいたのですが、最近はよくご自宅で犬や猫を出産させ子供を作ろうとしている飼い主様が多くなってきたと思います。

自分の愛犬や愛猫と血がつながっている子孫を迎えることは非常に喜ばしいことだとは思いますが、色々な知識をつけておかないとかなり大変なことも多くあると思います。

今回はそんな自宅で出産した場合、特に犬で気を付けておきたい新生児の奇形、口蓋裂についてご説明したいと思います。

口蓋裂とは?

哺乳類は胎児期に、母親のおなかの中で体を成長させていくのですが、顔面の骨格は左右のパーツがいくつかの突起で癒合しながら作られていきます。

この時に何らかの原因で癒合がうまくいかず、本来結合するべきところが裂けて穴が開いてしまうことがあります。

そうした癒合不全の中で、口蓋裂は上顎の癒合がうまくいかず、鼻腔内と口腔内がつながってしまう奇形です。

原因は胎児期における母親の栄養不良などが考えられていますが、原因はわかっていません。

特に短頭種のような頭が大きい犬種での発生率が高くなっているため、そういった遺伝的な背景があると思われます。

口蓋裂になると・・

口蓋裂は口腔内にできる奇形のため、一見普通の新生児と変わりません。

最初のうちは体格も普通で、母乳を吸うようなしぐさをしているのですが、口蓋裂があるためうまく吸えないため、体重の増加が見られなくなります。

また飲んだミルクが鼻から出てきたり、くしゃみなどが出やすくなります。

人工哺育などに切り替えても十分量のミルクを与えることも困難なので、どんどんと衰弱をしていきます。

また無理やりミルクを飲ませようとすると、鼻腔と口腔がつながっているため誤嚥させてしまうこともあり、肺炎を起こして亡くなることも多いと思います。

そういった意味では新生児にとって致命的な奇形の一つになります。

手術はいつ行うべき?

可能な限り早めに手術を行うことが望ましいとはどの教科書にも書かれていることなのですが、実際には生まれてすぐに手術というわけにはいきません。

安定した麻酔がかけられるまでには最低でも2~3か月はかかるので、その月齢に達するまでは何とか成長を祈るしかありません。

口蓋裂が存在していたとしても十分に成長がある場合には6か月ぐらいまで様子を見ることもあるので、タイミングは常に仔犬の状況次第だと思います。

手術は基本的に口腔内の粘膜をつなぎ合わせて行いますが、基本的に口の中の粘膜は皮膚のように伸びるわけではないので、一部切開を入れてわざと口腔粘膜を剥離して移動させて縫い合わせます。

しっかり縫合していたとしても、口腔内は舌や食塊などの刺激が常にあるため、再縫合が必要になることも多くあります。

完全に癒合が済むまでは2週間程度はかかるため、その間可能な限り縫合部位に刺激が加わらないように注意していく必要があります。

術後の予後は良く、十分に採食が可能になるため、体重の増加が著しく増えることを確認しながら成長を見守っていきます。

まとめ

口蓋裂は自宅で出産を行った場合、一番気を付けないといけない奇形になります。

これって?と思うようなことがあれば、写真などをメールで送っていただければご相談に乗れると思いますので、お気兼ねなくお問い合わせください。

2020-11-02

犬や猫の病気の中で、最も頻繁に起こる症状の一つとして下痢があげられると思います。

もちろん下痢の原因には様々なものがありますが、その理由の中でも代表的なものは寄生虫の感染です。

動物愛護法が改正され、また都市近郊部では地域猫の清浄化が進んでいるため、回虫や条虫といったいわゆる寄生虫というものはかなり少なくなってきたと思いますが、その一方で原虫と呼ばれるタイプの寄生虫に関しては時折発見されることがあります。

今回はそんな原虫の中でも最も一般的な「ジアルジア」についてご説明したいと思います。

ジアルジアとはどんな寄生虫?

あまり聞きなじみはないかもしれませんが、動物病院では日常的によく見られる寄生虫です。

ジアルジアは原虫と呼ばれる単細胞の寄生虫で、どちらかと言えばゾウリムシやアメーバーに近い存在のため、肉眼的にみるこできとはできないので、その点では同じ消化管の寄生虫である回虫や条虫などとは大きく異なると思います。

日本でよく見られる消化管内の寄生虫はそのほとんどが病原性に乏しく、ジアルジアも含めて感染をしていてもあまり症状が出ないもしくは軽度の下痢便程度で収まってしまうことが多いと思います。

ただ、感染した犬や猫の免疫力によって、回復までの期間はその個体によってかなり異ります。

この点がジアルジアの治療を困難にしている一つの原因になっています。

検査方法と治療について

基本的には検便によってジアルジアを検出しますが、検査で見つからないケースも多くあります。

ジアルジアは形態的に2種類に分かれており、通常発見できるのは栄養体と呼ばれる形態です。

栄養体は他の細菌よりも大きく、顕微鏡の視野の中をくるくる移動して回るので、実際に見ればとても目立つのですが、新鮮な便の中にしか生息していないため、検査までの時間がかかった場合は発見が非常に難しくなります。

そのため教科書的には硫酸亜鉛遠心浮遊法といった特殊な工程を行い、もう一つの形態であるシスト型と呼ばれる形態を見つけることを推奨しています。

ですが、一般的な動物病院では工程がやや煩雑なためほとんどやられていません。

またジアルジアの抗原検査を行うこともありますが、いずれも感度は低く、結局のところどの方法でもジアルジアを完璧に見つけることはできません。

したがって感染の疑いがあるようであれば、ジアルジアが見つからなくても治療を開始することが多いと思います。

ただその治療も効果的に働かないこともよくあります。

理由としてはジアルジアを駆虫する薬を使用しても、虫体の個数を減らすことはできても完全に死滅させることができないからです。

最終的には感染した犬や猫自身の免疫によって完全に排菌されるまで待つしかないため、治療には長い時間がかかることも多くあります。

特に仔犬や仔猫の場合には腸内の環境が成熟していないため、長期間にわたり感染が見られることもあります。

セカンドセレクトではそういった長期感染を起こしているような個体には腸内の免疫力を高めるため、食事内容の改善のほか、ビタミンEやAといった栄養を補充したり、サプリメントを使用したりします。

難治性の症例でも、併発疾患がなければ重篤化することはほぼないため、あせらずゆっくり治療することが大切だと思います。

まとめ

ジアルジアは以前は下痢をしている仔犬や仔猫からは頻繁に発見されていたのですが、動物愛護法のおかげか、確かにその機会は大幅に減ってきたと思います。

ただまだたまに見かけることも事実なので、特に仔犬や仔猫で下痢が中々治らないときにはお気兼ねなくご相談いただければと思います。

2020-10-21

おなかが減って低血糖になってイライラするという話を聞いたことがあるかもしれませんが、元来血糖値はちょっと食べなかったぐらいで急激に下がることはありません。

実際、体の中で低血糖にならないようなシステムはいくつもあり、病的な要因がない場合には数日食べてなくても血糖値は下がらないようになっています。

血糖値を急速に下げることができる唯一の体のシステムはインスリンによる血糖値のコントロールのみになります。

インスリンが過剰に分泌された場合、急激な血糖値の低下が起こるため、様々な症状が出てきます。

今回はこの過剰なインスリン分泌が起こる病気、インスリノーマについてご説明したいと思います。

インスリンの働きは?

ご存じの方も多いかもしれませんが、インスリンは血糖値をコントロールする重要なホルモンで、膵臓から分泌されます。

インスリンは血中にある糖を細胞内に取り込ませ、血糖値を下げる役目をしているほか、肝臓で糖を貯蔵させるように働き、脂肪組織の分解を抑制し、糖から脂肪を合成するなどの役目があります。

ちなみにいまはやりの糖質制限ダイエットはこういったインスリンの分泌を抑制することで体重をコントロールするダイエット法です。

インスリノーマの症状

インスリノーマの原因は膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が腫瘍化した悪性の腫瘍であり、腫瘍から分泌される過剰なインスリンによって様々な症状が発現します。

インスリノーマは初期段階ではほとんど気が付かないことが多いと思います。

実際に動物病院に来院される場合にはかなり症状が進んだ時に連れてこられることがほとんどです。

理由としては動物は低血糖に対してはかなり耐性が強いため、血糖値がかなり低下していても症状がほとんど出ないことが多いからです。

持続的な低血糖が起こってくると、ちょっと元気がなくなったり、ボーとしてる感じが増えてきたりします。

またインスリンの脂肪合成作用により、初期段階では体重が異常に増加している場合も見られます。

症状が進むにつれ足腰のもつれが目立つようになったり、完全に意識が混濁しているような時間が長くなったりしていきます。

ただ症状が進んでいたとしても外見上の変化はあまりなく、まれに顔面神経などの麻痺が見られることもありますが、ほとんどの場合はただただ元気がないといった感じが多いと思います。

いよいよ病状がかなり進んだ場合には強い痙攣をおこすこともあり、痙攣と昏睡を繰り返しながら突然死を起こすこともあります。

また病状の終末期には肺や周辺のリンパ節に転移をすることも多く、動物の状態をさらに押し下げることになります。

検査や治療法

インスリノーマは低血糖であることを確認することから始まります。

低血糖になる病気はそれほど多くはないのですが、そのほかの病気の原因を排除し診断を進めていきます。

実際にはエコー検査やレントゲンなどで膵臓の腫瘍の存在を確認できれば診断はつきやすいのですが、膵臓自体は画像上の変化を見つけることが難しく、CT検査などの画像診断を必要とします。

CT検査には全身麻酔が必要なことも多く、特にフェレットの場合には画像上の診断は非常に困難なため、一般的には血液検査から推測していきます。

そのため、低血糖及び、インスリンの血中濃度を確認することで診断していくのですが、時間帯によっても数値のばらつきが多かったり、個体差もあるため完全に判断することが難しいこともあります。

インスリノーマと判断された場合、よほどの高齢であったり、転移がなければ癌に侵されている膵臓部分の切除をすることが望ましいとされています。

手術により完全に低血糖の状態が消失する場合もあれば、症状の緩和につながるケースもあるため、治療法の一つとして積極的な視野に入れていてもいいとは思いますが、その反面、膵炎や糖尿病などの術後の合併症も起こりやすく、手術の内容としてはリスクの高いものとなります。

また術前より低血糖状態を改善しておかなければならないため、集中管理が必要なケースも多く、セカンドセレクトを含めた一般的な動物病院では手術を安全に執り行うことは困難だと思います。

そのため、飼い主様によっては手術自体を望まない方もいらっしゃいます。

手術後や、手術ができない状態の場合、もしくは手術自体を希望しない場合は内科的な治療を行う形になります。

急激な血糖値の上昇により過剰なインスリンが分泌されることを防ぐため、食事は少量頻回で行うことが望ましいと思います。

特に血糖値が上がりやすい炭水化物と脂肪は極力抑えた方がいいので、鶏肉のささ身や胸肉などの高たんぱく低脂肪、低炭水化物の食事がお勧めです。

食事管理だけでは低血糖による症状が改善しない場合はステロイドを継続して服用します。

本来、ステロイドは抗炎症作用のある薬として使用するのですが、副次的に血糖値を挙げる作用もあるので、低血糖時には有用です。

ただ長期的な使用による大きな副作用も出てくるため、多くの飼い主様を悩ますようなこともあります。

その他の薬も多くあるのですが、効能や費用などの面からあまり実際には行われないことが多いと思います。

まとめ

インスリノーマを患った動物の予後は一般的にはあまりよくないことが多いため、最終的に安楽死を検討する飼い主様もいらっしゃいます。

セカンドセレクトでは病気になった動物だけでなく、飼い主様の精神的なケアが行えるようカウンセリングも行っております。

何かお困りごとがありましたらいつでもご相談ください。

2020-10-09

人間に比べると犬や猫の目の病気は比較的多く、特に目の表面の角膜に見られる病気は動物病院でも日常的に診られます。

一説には角膜の表面に出ている神経が、犬や猫は人間と比較してかなり少ないからとも言われています。

そう思うと、犬や猫は目の中に大きな糸くずなどが入っていても全く気にしないのは不思議ではないかもしれません。

角膜の病気の中には慢性的な疾患も多く、多くの場合飼い主様も日常的なケアが必要な病気がほとんどです。

今回はそんな角膜に起こる病気の中の代表的な病気、乾性角結膜炎をご説明したいと思います。

乾性角結膜炎とは?

乾性角結膜炎はいわゆるドライアイと呼ばれる症状で、何らかの理由で涙の分泌量が減少し起こる疾患です。

通常、涙は液性の涙と油性の涙が混合しています。

正常な涙層では眼の表面である角膜の上に油性の涙が土台を作り、その上に液性の涙が保持されることで形成され、角膜を保護する役目をしています。

乾性角結膜炎は涙の成分のうち液性の涙が分泌されなくなることで起こります。

ちなみに油性の涙が出なくなると出る病気としては涙やけがあげられます。

【涙やけ】犬や猫の目頭がガビガビに変色。目薬をつけても治らない?原因やケアなど。

液性の涙は瞬膜と呼ばれる眼の内側にある膜や眼瞼周囲にある分泌腺から分泌されるのですが、涙液生成機能の低下はこれらの分泌腺が局所的な免疫異常を起こすためと考えられていますが、今のところ分かっていません。

乾性角結膜炎になった動物の目の表面は常時乾いたような感じになるため、角膜全体が濁ったような外観になります。

涙液の中には抗菌、抗炎症作用を有するたんぱく質が含まれているのですが、これも分泌されなくなるため、常に角膜の表面は刺激、感染を起こし、結膜炎が継続的に診られるようになります。

また油性の涙が目の表面にへばりつくため、ドロッとした目やにが目の表面に付着し、また感染を起こすと色のついたガビガビとした目やにが目の周囲に固着するようになります。

ケアの方法は?

乾性角結膜炎は基本的には根治しない病気のため、目の異常に気付いたら早めの段階からケアをしていくことが大切だと思います。

初期段階では見た目からは乾性角結膜炎はわかりにくいことも多く、シルマー試験と言われる涙量を計測するための試験紙で確認します。

涙量が低下していることが判明した場合、ヒアルロン酸などが含まれている点眼液や眼軟膏を使用していきますが、症状が進んでいる場合は細菌の2次感染を起こしていることも多く、抗生剤を使用していきます。

割と多くの場合、乾性角結膜炎は免疫異常からくるため、免疫抑制剤を含んだ眼軟膏などを使用します。

こういった治療により反応が良好な症例でも、点眼を中断すると再発するケースも多いため、結局のところは飼い主様の毎日のケアによって維持をしていくことになります。

まとめ

どんな病気でも慢性的な疾患は飼い主様が管理していくことになるため、負担もかなり多くなると思います。

セカンドセレクトではできる限り飼い主様のご負担を軽減するような治療を行っていますので、お気兼ねなくご相談いただければと思っております。

2020-09-29

動物病院ではよく緊急手術があります。

当然緊急手術なので、前もって手術予定がたっていないことがほとんどですが、そういった手術の中で最も動物病院で行われているのが帝王切開です。

もちろんある程度は予測はつくのですが、そのタイミングなどについては多くのお問い合わせがあります。

今回はその帝王切開についてご説明したいと思います。

まず犬や猫の妊娠、出産は?

ご存じの飼い主様も多いかもしれませんが、犬や猫の性周期は人間とは大きく異なります。

犬は季節繁殖動物と言い、春と秋にのみ年2回排卵が起こり、交配が可能になります。

また排卵された卵子は子宮内での生存期間が1週間程度と長いため、正確な交配時期を推測することが難しいことが多くあります。

ちなみに発情期に陰部からの出血は見られるのですが、月経による出血とは異なります。

また受胎しなかったメス犬はそのまま発情休止期に入り、犬によっては強い偽妊娠の兆候が見られることがあります。

一方で猫の場合は、交尾排卵動物と呼ばれ、明確な交配時期はなく、交配して初めて排卵が起こります。

また排卵には交尾による刺激が数回必要と言われており、同腹子でも父猫が異なる場合もあります。

犬、猫ともども妊娠期間は60日から65日程度とされていますが、種類によっても大きく異なるほか、人間と同様、個体によって日にちは数日ずれることはざらにあります。

この辺りが帝王切開を行うべきかどうか判断する際に、非常に迷うところになります。

帝王切開のタイミングは?

先に行ってしまうと、帝王切開を行わなければならないベストなタイミングは誰にもわかりません。

妊娠から出産までの期間は個体差が数日から1週間ほどあるため、正確な出産日を推測することは非常に困難です。

犬の場合は一般的には出産直前の動物は体温が35℃から36℃まで低下し、それが見られてから半日以内には出産が始まるとされています。

猫の場合には、出産前日あたりから食欲が絶廃になるため、こちらが出産日の予測になります。

犬の場合も猫の場合もこういった出産兆候が始まってから24時間程度で陣痛が始まりますが、1日たってもそのような出産行動に入らなければ帝王切開を検討する必要が出てきます。

また陣痛のようなそぶりがあっても胎児が出てこない場合どれくらい待てばいいのか?とよくご質問を受けるのですが、こちらに関しても個体差が大きいため正確な返答は困難です。

こちらも一般的な話にはなりますが、出産行動が始まって12時間以上たっても1頭目が出てこなければ、帝王切開を検討するタイミングになります。

また1頭目は無事に出産されても、2頭目が速やかに出産されない場合もよくあり、3時間以上も間が開くようであればやはり帝王切開を検討する形になります。

まれにあるのですのですが、激しい陣痛が続いても出産されないケースは早めに対応した方がいいとされています。

いずれにしてもこれらのタイミングは絶対ではなく、あくまでも目安になるので、最終的な判断は常に相談しながらという形になります。

帝王切開は簡単?

帝王切開は術式としては簡単なのですが、通常の手術とは異なることが多くあります。

一番の違う点は、とにかく可能な限り胎児が取り出されるまでの時間を短縮し、麻酔が胎児に与える影響を最小にするところです。

場合によっては通常よりも浅い麻酔で手術を行うこともあり、ある程度の熟練度は必要だと思います。

また取り出された胎児がいつ目覚めるかどうかは誰もわかないので、10分~1時間程度、蘇生に時間がかかっても、その後順調に発育していくこともあるため、蘇生処置をいつ終わりにするかも判断が非常に難しいと思います。

まとめ

セカンドセレクトでも帝王切開はご対応しており、小型犬であれば全体的なご費用は10万円程度になります。

ただ自然に分娩するのが一番リスクが低いので、ぎりぎりまで帝王切開は行わないようにお勧めしています。