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2019-12-21

あまり肯定はしたくないのですが、最近になってちょくちょく「若いころと違う」ということを実感するようになりました。

まだ目などの感覚器の衰えは感じないのですが、電話番号や人の名前が一発で覚えられなくなったり、いつもと違う運動をするとすぐに筋肉痛になってしまったり、食べ過ぎるとすぐお腹に脂肪がついたり・・。

年齢を重ねていくと経験値が増えていくのでもちろんいいこともあるのですが、今後さらに年齢を重ねた時にできないことがいくつも出てくると思うと少し悲しい気持ちになります。

少し強引な出だしになってしまいましたが、ペットの年齢によって選択される治療は大幅に変わってくることがよくあります。

同じ治療でも高齢の動物たちにとっては非常に負担のかかることがあるからです。

高齢になって腫瘍が見つかったら・・

高齢になって手術が必要な大きなけがをしてしまったら・・

高齢になって○○になったら・・

ペットが若くて元気な時には全く想像もしていなかったことでも、難しい判断をしないといけない時がやってくる確率はみな等しく同じです。

本当は治療をした方がいいのはわかっているが、高齢だからこそかかる負担やリスクが心配で踏み込めないという場面は、普段診察をしていてもよくあるシチュエーションです。

セカンドセレクトでは今までも高齢になったペットの診療についてのブログを書いてきました。

過去記事を以下に貼っておきます。

高齢犬・高齢猫のリンパ腫。年老いたペットに抗がん剤治療は可能?やった方がいい?リスクは?

乳腺腫瘍ができたと言われたがどうしよう・・・手術ができない老齢のメス猫・犬

【高齢犬】手術できない年齢で会陰ヘルニアになってしまったら・・。セカンドセレクトからの提案

今回の記事では高齢になった時に起こった椎間板ヘルニアについてです。

10年以上前に一大ブームとなったミニチュアダックスフンドが、令和の時代には高齢犬の代表格になってきました。

セカンドセレクトにも多くの高齢になったミニチュアダックスフンドが通院されていますが、その犬たちの大きな問題が椎間板ヘルニアです。

もともとミニチュアダックスフンドは椎間板ヘルニアの好発犬種なのですが、その治療法はもっぱら温存療法か手術かの選択になります。

どちらを取るべきかはその時の症状で決断していくのですが、高齢になったミニチュアダックスフンドが手術を適応するべき症状になった時に手術を選択するかどうか、多くの飼い主様が悩まれています。

今回の記事がご参考になれば幸いです。

手術を考えるべき椎間板ヘルニアの症状とは

以前からある基準ですが、椎間板ヘルニアはグレードがⅠからⅤまであります。

グレードⅠは疼痛のみの症状で、グレードⅢあたりから顕著な後肢の麻痺が見られ、グレードⅣで排尿麻痺、グレードⅤでは痛覚の麻痺が見られます。

一般的に後肢の歩行不全が見られるグレードⅢまでは内科治療もそれなりに有効ですが、排尿麻痺が見られるようなグレードⅣ以降からは内科的な温存療法の治癒率は著しく低下します。

グレードⅤでは外科手術以外での治療の有効性はほとんど認められないと言われています。

ちなみに、よく言われている48時間以内に手術しないと治癒が見込めないというのはグレードⅤの深部痛覚が消失した症例での話です。

これはあくまでも個人的な見解にはなりますが、20年程度前であれば普通の一般診療を行う動物病院では椎間板ヘルニアの手術はあまり行われていなかった記憶があります。

なので、椎間板ヘルニアの手術を積極的に勧めるのはグレードⅣからのことが多く、早期からの手術を提案するのは外科治療を積極的に行う2次診療の病院ぐらいでした。

その後、ミニチュアダックスフンドの空前のブームが起こり、椎間板ヘルニアを患って来院する犬の頭数も莫大に増加していきました。

そのため、椎間板ヘルニアの手術が執刀可能な獣医師の数も増え、また手術が安全に行える手術器具も導入されるようになったため、今では普通の町の動物病院でも行えるような手術になっています。

結果として以前よりも早い段階で手術を推奨する獣医師が増え、現在では歩行不全が見られるグレードⅡからⅢの段階で内科治療よりも外科治療を進める動物病院が大多数を占めるようになりました。

手術後の治癒率自体はここ数年ではほとんど変化はなく、また病院によって差が出てくることもほとんどなくなりました。

違いとしたら、術創の大きさ程度だと思います。

ちなみに椎間板ヘルニアの手術の料金は、都内であれば入院とMRI検査が込みで30万円前後が相場になります。

入院自体も3~5日前後が普通です。

ぼく自身は椎間板ヘルニアの手術の執刀経験は、平均的な獣医師よりも多いとは思います。

ですが手術を勧めるのはグレードⅢで内科治療を行ってもあまり効果が見られなかった場合からです。

おそらく今の現状と比べると、他の獣医師よりも少し古典的な判断にはなっていると思います。

理由としては、手術をしても再発する犬は再発しますし、手術をした犬が高齢になった時に背が丸く曲がってしまうことが多いと思うからです。

実際どれくらいの人が手術を決断する?

当然のことながら実際に手術を検討する飼い主様の割合は、犬の年齢によります。

外科手術を考える飼い主様の割合は、通われている動物病院によってもまちまちだと思います。

極端な話、整形外科を専門に行っているような病院に通われている飼い主様であれば、年齢にかかわらず積極的に手術を検討するでしょう。

一方でセカンドセレクトは町によくある普通の動物病院です。

ですので通われている飼い主様も、一般的な平均的な意識で治療に臨まれることが多いと思います。

もし飼っている犬が椎間板ヘルニアになり、手術をしないといけない状態になった時、犬の年齢が10歳未満であればほぼ100%の飼い主様が手術を検討します。

10歳が一つの分かれ目となり、手術を積極的に考える飼い主様と考えない飼い主様の比率が7:3ぐらいの比率になります。

それから年齢が1歳重ねるごとに1割~2割ぐらいづつ変化していきます。

例えば11歳の犬であれば、積極的に手術を検討する飼い主様は半分程度になり、13歳であれば2~3割程度、15歳であれば1割未満の飼い主様しか手術を望まれません。

もちろん犬の一般状態や、排尿麻痺の介護が容易な環境なのかどうかにも変わってはいきますが、全体的な印象としてはそんな感じだと思います。

まとめ

人間と犬や猫ではもともとの余命が全く異なるため、どこまで積極的な治療をすることがいいことなのかという答えを探すことは容易ではありません。

セカンドセレクトでは最近そういった悩みを抱える飼い主様のご来院が非常に増えてきています。

もし今悩まれている飼い主様が偶然この記事を読んで、少しでも参考になればと願っています。

2019-12-15

ペットを飼っていると、いきなり調子を崩すということは多くの飼い主様が経験していることだと思います。

子供同様、ペットはうまく自分の症状を表現することが出来なため、たまにどこに原因があるのか苦慮することもあります。

「食欲がいつもよりない」、「ダルそう」、「熱っぽい」など具体的にかけるような、いわゆるハキがなくなる病気については、色々な可能性が考えられます。

そのため、人間であれば不要かもしれないような検査の回数も必然的に多くなってしまうことが動物の治療の難点です。

さらにはそういった病気の中でも、検査をしてもはっきりとした原因が断定できない病気もあります。

今回はそんな病気の中で、個人的には割と増加しているような気がする「免疫介在性関節炎」についてご説明したいと思います。

免疫介在性関節炎って?

免疫介在性関節炎はその名の通り、免疫異常によって起こる関節炎です。

体重負荷や加齢、運動負荷などで起こる関節炎でも炎症は起こるのですが、免疫介在性関節炎は自己免疫が自分の関節を攻撃し、炎症を引き起こす関節炎です。

したがって炎症の度合いは非常に強く、全身に影響を与えることが多いと思います。

教科書的には関節軟骨にただれたような病変を残すびらんタイプと、肉眼的にみても関節面は割と滑らかなままな非びらんタイプに分かれるのですが、正直、町の動物病院でどちらかを見極めるのはとても難しいと思います。

関節炎とはいっても、初期段階ではびっこなどが見られることはほぼなく、なんか最近動きが悪い、震える、食欲もいまいちなどの症状で来院することがほとんどです。

犬種的にはトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、コーギーなどの最近の人気犬種でよく見られるため、とにかくこの病気を患っている犬は多くなったと思います。

関節炎ができる場所は、手首やかかとのくるぶし、足先に多いと言われています。

またある程度の体重のある動物の膝関節に炎症が起こると、2次的に前十字靭帯の断裂が起こることもあります。

大型の犬の場合、前十字靭帯断裂は手術適応症例になるのですが、見た目から免疫介在性関節炎が原因なのかどうかを判断するのは困難なため、より慎重な判断が必要になることもあります。

一方で猫での発症はそれほど多くはないと思いますが、先ほども書いた通り、見た目の症状がはっきりしないうえ、猫特有の性質もあるので、感度の良い検査方法があったら診断がつけられる猫は多くなるかもしれません。

また一部の犬の免疫介在性関節炎では髄膜炎を併発していることも多く、頭をなでられたり、首を痛がったりすることもあります。

【ステロイド反応性髄膜炎】突然首を痛がる。発熱と震え。異常にCRPが高い若い犬は要注意。

検査方法は?

関節が腫れてくるまでの症状になった時には免疫介在性関節炎の診断は非常につきやすいのですが、びらんがあるかどうかまでは、より症状が進行しないとレントゲンでもわかりません。

CTやMRIなどの画像診断や、関節鏡検査などの感度の良い検査であれば、もっと早い段階から診断はつくかもしれませんが、普通の動物病院ではまだ一般的な検査ではありません。

セカンドセレクトも含めてですが、特異的な病気を疑う所見がなく、発熱があり、炎症性タンパクと呼ばれるCRPの値が高くなっているようであれば、免疫介在性関節炎を疑います。

多くの場合、多発性関節炎と呼ばれる疾患であることが多く、この場合は関節のびらんや変形はありません。

一方で免疫介在性関節炎により、関節軟骨にびらんが見られるようになった場合、いわゆる「関節リウマチ」と呼ばれるようになります。

関節リウマチは犬の場合、発生頻度はかなり少ないのですが、かなり厄介な病気の一つです。

なぜなら、関節リウマチなのか、多発性関節炎なのかははっきりさせる検査はありません。

そのため人間のリウマチの診断基準を模倣した「犬の関節リウマチ診断基準」に照らし合わせ、それに何項目当てはまるかでリウマチなのかどうなのかを決定するしかその方法はありません。

また、基本的には関節リウマチと多発性関節炎では治療法はほとんど一緒なのですが、予後が違うことが臨床上では非常に重要です。

人間でもそうですが、関節リウマチについては進行性の病気であり、適切に治療をしたとしても症状は緩慢に進んでいきます。

最終的には関節の完全なる変形が見られるようになってしまい、日常生活においても多くの影響を残すことになります。

治療法は?

もっぱらステロイドによる免疫抑制治療がメインになります。

よく知られていることですが、ステロイドは長期間使用すると副作用が出やすい薬ですが、その他の薬剤に比べると即効性も効果も非常に高いうえ、安価な薬のため、獣医領域では使用頻度はかなり高いと思います。

病状はステロイドにはよく反応し、2~3日以内で見た目の症状は大幅に改善することがほとんどです。

一般的にステロイドには年間の許容推定量があるのですが、その量まで緩やかに減薬していく方法がよくとられます。

減薬していく中で、十分効果が得られなかったり、再発が見られたりした場合には、その他の免疫抑制剤を使用していきます。

また、関節リウマチによって関節の変形が見られている場合には、断続的な疼痛が見られるようになるため、強力な鎮痛剤が必要になります。

薬の種類は色々あるのですが、動物によってどの薬が合うのかは実際には投薬してみないわからないこともあり、症状の改善に至るまで治療が長引くケースもあります。

いずれにしても生涯にわたり十分注意して観察していかないといけないため、飼育環境の改善や食事の改善、特に栄養管理もしっかり行わないといけないと思います。

まとめ

関節の病気にかかわらず、ペットがちょっとしたハキがなくなったと感じることはよくあると思います。

こんな症状で動物病院に行ってもいいのかな?と躊躇する飼い主様も多くいらっしゃいますが、病気は何でも早いうちに対応することに悪いことはないので、お気軽にご相談ください。

2019-12-09

仕方がないことですが、生き物はすべてどんどん年を重ね、老いるごとに変化をしていきます。

筋量や持久力などの運動能力の衰えや、代謝機能の低下、回復力の低下など、さまざまな点で若い個体よりも能力が低下していきます。

また外見の変化もみられるようになり、白髪になる、腰ががってくる、しわが多くなるなどが代表的な変化だと思います。

こういった外見上の変化のうち、白内障とは違った理由で、眼球が白くなってくることがあります。

これは核硬化症と言って、中高齢以上の犬でよくみられる老齢性の変化です。

診察をしていても割と心配される飼い主様が多いので、今回ご紹介する記事がご参考になれば幸いです。

そもそも白内障って何?

白内障は文字通り、目が白くなる病気ですが、正確には目の水晶体と呼ばれる目のレンズが白く濁り、視力が低下する病気です。

水晶体が白くなる原因は、水晶体に含まれるたんぱく質が変性して白く濁るからなのですが、実際のところはなぜたんぱく質が変性するかはわかっていません。

糖尿病や高脂血症などがはく白内障を引き起こす要因にはなりますが、若年性のものもあり、実際のところはまだ研究段階と言ったところです。

これはペットでも同じことが言え、犬は多く、猫はまれで、犬種によって発生頻度は異なりますが、ほぼ人間の医療を模倣しながら治療を進めています。

じゃぁ核硬化症って?

眼球のレンズは薄い膜で覆われており、その膜の下でレンズの細胞となるものが終生作られています。

したがってレンズは年輪のように、中心部は古いレンズの細胞が、外層は若い細胞になります。

中心部の細胞はある程度年月がたつと、レンズ自体の圧によって周りの若い細胞よりも硬くなっていきます。

この現象をレンズの中心部=核が硬くなっていくので、核硬化症と言います。

核硬化症という名前は、目に関する言葉が全く入っていないように見えるので、かえって何かひどい病のように思えますが、病気ではないのでそれほど心配する必要はありません。

正確な表現ではありませんが、肉眼での見え方としては白内障にみられるようなレンズにひび割れたような線は見えず、均一にぼやけた感じで白くなっている感じになります。

治療は?

むろん、病気ではないので治療の必要性はありません。

核硬化症によって視力が低下することもありません。

ですが、大抵は核硬化症は中高齢の犬によく起こる老齢性の変化なので、視力自体は人間と同様、年齢とともに低下していると思われます。

また、核硬化症が見られるあたりから、初期の白内障も始まっていることも多いので、白内障自体の治療を行う必要があるときもあります。

いずれにしても、核硬化症が見られた時点で、年齢による衰えは眼だけでなく、様々なところで見られるようになりますので、全身的な健康チェックをしてみるのもいいかと思います。

まとめ

セカンドセレクトの一つの特徴として、他の動物病院よりもやや年齢を重ねたペットが多くご来院されています。

もちろん、そういったペットの高齢化に合わせた治療やサービスも充実していますので、何かお困りの際はいつでもご相談ください。

2019-12-02

ぼくが小学生のころ、ウサギと言えば学校で飼育している動物のイメージでした。

それがここ15年でだいぶと状況は変化し、いまではペットとしての不動の人気を得たと言っても間違いではないかもしれません。

その反面、いまだにウサギを診察していない動物病院は比較的多いため、多くのウサギの飼い主様の悩みの一つになっています。

セカンドセレクトは特にウサギを専門に診察しているわけではありませんが、様々な病気にご対応することは可能です。

今回ご説明させていただく病気は「ウサギの子宮疾患」です。

メスのウサギでは頻発する病気なので、ご参考にしていただければと思います。

ウサギの子宮疾患とは?

ある統計によれば、未避妊のメスのウサギが3~4歳を越えると50%程度の確率で子宮の病気になると言われています。

子宮の病気の中では子宮の腺癌が最も多く、ついで過形成や子宮内膜の静脈瘤も多いとされています。

犬や猫で多い、子宮蓄膿症や子宮水腫の発生も多くみられるとの報告がありますが、ぼく自身はウサギでは見たことはありません。

どんな症状?

大抵の場合、血尿が見られることで初めて病気に気づくことが多いと思います。

血尿の具合は持続的に少量混じることもあれば、大量に鮮血が見られることもあります。

出血の量によっては、一時的に貧血や血圧の低下を招くことがあり、食欲不振や活動性の著しい低下がみられることもあります。

検査方法は?

犬や猫、人間もだとは思いますが、子宮の病気はエコー検査によって診断することが普通です。

ウサギの場合もエコー検査によって診断をつけるのですが、その感度は他の動物に比べると著しく低くなります。

理由は様々なのですが、草食動物特有の腸の構造と、他の動物に比べると腹腔内脂肪が多いため、エコー検査では診断がつかないことも多くあります。

そのような場合、セカンドセレクトでは貧血がないかどうか血液検査を行い、貧血がある場合は子宮疾患と仮診断を行い治療を進めていきます。

貧血もなく、ウサギの状態も安定しているのであれば、抗生剤や止血剤を使用しながら、持続的に血尿が起こるかどうか判断していきます。

血尿が一過性の場合は膀胱からの出血と判断し、経過を観察していきますが、持続的な血尿が見られた場合は、子宮の疾患として治療を進めることをお勧めしています。

治療法は?手術のリスクについて。

残念ながら治療法は外科手術により、子宮と卵巣を摘出するのが唯一の方法です。

手術の主義自体はそれほど煩雑ではなく、子宮疾患の原因が悪性の腺癌だったとしても、比較的予後はいいとされています。

ぼく自身は過去に子宮の腺癌が肺に転移しているウサギを診たことはありますが、それほど高頻度ではないと思います。

問題はウサギの外科手術は、他の動物に比べると様々な点においてもともとリスクが付きまとうところだと思います。

まずは麻酔の方法です。

犬や猫、フェレットであったとしても気管に専用のチューブを挿管し、人工呼吸につなぐことができるため、麻酔の調節が非常に簡単に行えます。

ウサギの場合、咽頭の構造上、気管挿管がは困難なため、呼吸は人の目で管理するしかないので、麻酔による事故が他の動物に比べ高頻度で起こります。

また、ぼく自身はないのですが、胃や盲腸にガスをため込み易いため、開腹時に胃腸を傷つける事故が多いと言われています。

ウサギの消化管は非常に薄いため、一度傷つくと治癒せず、最悪の状態を迎えることもあります。

その他にも術前や術中の出血により貧血などがあった場合、事実上輸血が困難であることもリスクを大幅に上げる要因になるところもウサギの手術の問題点です。

このようなリスクはあるのですが、大量の出血を伴うウサギの子宮疾患の場合は、やはり手術を起こった方がリスクが少ないというのが大多数の意見であることは事実です。

セカンドセレクトでも以上のことをお伝えしながら、慎重に治療を進めています。

まとめ

ウサギは他の動物に比べても特に繊細な動物です。

治療をしてもストレス的な要素もあってか、なかなか快方に向かわないこともよくあります。

セカンドセレクトでは、そういった動物のためにも往診診療も行っています。

もちろん手術は病院で行うしかありませんが、その後の経過などはご自宅での診療にてご対応も可能です。

もしこの記事を読んでみて、もしかしたら・・と思うようなことがあれば、いつでもご相談ください。

2019-11-26

よく人でも胸焼けなんて言葉を使いますが、胃の内容物が喉のところまで上がってくる感覚は、ほとんどの方が経験したことのあるものだと思います。

実際に吐くところまではいきませんが、胃酸の何とも言えない後味は、決して快いものではないと思います。

こういった症状が頻繁に起こる場合、人間では胃食道逆流性疾患とか逆流性食道炎という病名がつき、たまに生活の改善と内服の投薬を医師から指示されることがあります。

ペットの世界でもこういった胃食道の逆流性疾患はあることが知られていますが、症状があいまいなため、動物病院に連れて行った方がいいか悩まれる飼い主様も多くいらっしゃると思います。

今回の記事ではこの胃食道逆流性疾患をご説明したいと思っています。

胃食道逆流性疾患の原因

食道は強い蠕動運動の能力をもち、口から入った食べ物を胃へと運びます。

食道は上部と下部で筋肉の種類、性質が異なり、胃に近い食道は非常に強い力で収縮しながら胃の入り口部分と結合します。

この力によって胃からの内容物の逆流を阻止することができます。

余談にはなりますが、この食道の能力は麻酔をかけると減弱するのですが、それでもある程度の絞扼力が残ってしまうので、しばしば内視鏡によって異物を取り除くときの弊害になることがあります。

人間では暴飲暴食や不規則な食生活により、胃が膨満しがちになり、下部の食道に胃内の圧が加わることにより食道の収縮力が失われてしまい、症状が発現すると言われています。

動物の場合はこれといったことは言われてはないのですが、膵炎などの疾患があったり、肥満などの体型的な問題などが原因とされていますが、はっきりとした原因が判明することは少ないと思います。

巨大食道症など重大な基礎疾患により引き起こされることもありますが、その場合にはそのほかの症状の方が目立って見えるため、診断はつけやすくなります。

個人的にはもともと動物は四つ足のため、生理的にあるような胃の内容物のちょっとした逆流でも人間よりも症状が強くなるのが一つの要因では?とは思っていますが、あくまでも個人的な意見ではです。

胃食道逆流性疾患の症状

一言で言うとパッとしません。

実際に胃の内容を吐き出すところまでいかないことも多く、ぺろぺろ舌なめずりの回数がやたら増えるなどの症状が見られます。

一過性の食欲不振などもみられることもありますが、見かけ上はほとんど変わらないこともよくあります。

気持ち悪そうな表情は、食後すぐに出ることもあれば、空腹時にみられることもあるので、症状にあまり一貫性はないと思います。

実際、内視鏡などで食道を観察しても異常は全く見られないことがほとんどで、治療を行うべきかどうか悩むケースもよくみれます。

人間では成人の場合、軽度の逆流性疾患であれば5割近くの方が経験をしていますが、ほとんど治療は必要としません。

犬や猫の場合も同様で、頻度や症状の重さもはっきりとしないケースも多いため、食事の内容を変更したり、いくつかの薬剤を試験的に投与して様子を見ていきながら、症状の改善があったかどうかで診断を下すこともあります。

治療法は?

できる限り、胃に負担をかけないようにするため、食事を頻回していただくことをお勧めしています。

これは胃内の圧をあげないようにするためと、空腹の時間を可能な限り減らし、過剰な胃酸の生成や十二指腸の内容物が逆流しないようにするために役に立つと思います。

食事の内容の変更だけでは症状の改善がない場合は、胃酸の生成を抑える薬を使用します。

また胃の内容をスムーズに腸へ移動させるため、胃腸の蠕動運動を促す薬も併用していきます。

血液検査などで慢性的な膵炎を引き起こししている場合には、過剰な膵臓の働きを抑えるためにタンパク分解酵素阻害薬を使用することもありますが、効果はいまいちのことも多い感じです。

よほどひどい場合にはステロイドのような抗炎症作用のある薬も使用しますが、胃炎を引き起こすことも多いので、使用は極力控えた方がいいと思います。

結局のところ、症状もはっきりとしないため、治療を開始してすっきりよくなったという感じも得られないことも多いので、普段の生活の中で色々変化をつけながら様子を見ていくことがほとんどです。

まとめ

胃食道逆流性疾患は命にかかわるような症状になることは少ないのですが、気持ち悪そうにしている犬や猫の姿を見ていると何とかしてあげたい気持ちになってきます。

この記事を読んで、そういえばうちの犬や猫も・・・と思い当たることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

2019-11-21

自分のペットが突然に活動性を失ったり、食欲がなくなったりすると慌ててしまうことも多いと思います。

こういった場合、心当たりもなく、動物病院に連れていこうか迷っていると、どんどん症状が重くなることがあります。

下痢や吐き気などの特徴的な症状と異なり、食欲不振などの不特異的な症状は、初期段階では飼い主様だけでなく、多くの獣医師を悩ますことが多く、実際に自分も診断に至らなかったことたびたびもあります。

今回はこういった悩ましい病気の中でたまに見かける病気、心タンポナーゼについてご説明したいと思います。

心嚢水って?心タンポナーゼとは?

心臓は強い心臓の筋肉の力で全身に血液を送り続けています。

心臓が効率よく血液を送り出せるよう、筋肉の発達だけでなく、哺乳類の心臓の内部は非常に機能的に発達しています。

また心臓の外部でも心臓がスムーズに動けるように分化した機能が色々とあるのですが、その一つが心膜や心嚢水になります。

心膜は心臓を包み込む薄い膜ですが、1枚の膜が2重に折り重なったもので、折り重なった内部の空間に液体を少量含ませています。

この液体は心嚢水と呼ばれ、普段は心臓がスムーズに動くための潤滑油として機能しています。

心嚢水は正常な犬や猫でも少量存在しているのですが、レントゲンやエコー検査で見えることはほとんどありません。

特にエコー検査で心嚢水の貯留が明らかに見えるときは、異常な心嚢水の貯留があると判断されます。

心膜や心臓を一番外側で包む心嚢は非常に強い膜であまり伸縮性がありません。

心嚢水が異常に貯留してくると、その圧によって心臓がうまく拡張できなくなるため、心不全を特徴とした様々な症状が出始めます。

このような状況を心タンポナーゼと言います。

原因は?

心嚢水の異常な貯留はほとんどの場合、出血性によることが多いとされています。

出血性の心嚢水が溜まる理由としては腫瘍が原因であること多くあります。

大抵の場合、心臓の右側に腫瘍が発生することが多く、エコー検査によって判断がつけられることもあります。

腫瘍の種類は悪性度の高いものから、進行が緩やかなものまでいろいろありますが、腫瘍の種類を簡易的に調べる方法はなく、あくまでも外科的に切除した腫瘍に対して病理検査を行うしかありません。

また腫瘍性以外でも何ら理由なく起こる出血性心嚢水もあり、中高齢の大型犬ではたまに見かける症例です。

その他、まれなタイプの心嚢水の貯留としては感染性のものがあげられますが、正直なはなし、自分はいまだに診たことはありません。

心タンポナーゼの症状

異常に貯留した心嚢水の最大の問題点は、心臓の拡張を抑制することです。

極少量であれば目に見えての症状はあまりないのですが、心嚢水の増加に伴い、活動性の低下、食欲不振などが見られます。

さらに心嚢水がたまり、心膜を含めた心臓の径が大きくなると、発咳や食道圧迫による嘔吐が見られるようになります。

いよいよ心嚢水が限界まで溜まり、心臓の内圧以上の圧が心嚢に発生した場合、顕著な心不全の症状を引き起こします。

胸水や腹水は一般的によくみられる症状であり、心拍出量の低下からの失神や呼吸困難が見られるようになります。

治療について。外科手術は適用?

心嚢水が貯留し、心タンポナーゼを起こした犬や猫には有効な薬はありません。

経皮的に長く細い針を差し込み、直接心嚢内に針を刺入させ心嚢水を吸引するしかありません。

心嚢水はまた徐々にたまり始め、再度心タンポナーゼを引き起こすに至るまで早ければ1週間程度、場合によっては半年以上開くこともあります。

多くの獣医師の経験則から、2,3回心嚢水除去を行い、症状が鎮静化すればよし、鎮静化しなければ外科的に心嚢膜を切開する方法を選択します。

心嚢膜を切除したすることで、心嚢水をより広い胸腔内に漏出させ、胸腔から自然吸収させることで心嚢水の過剰な貯留を防ぎます。

腫瘍が認められたケースでも、心臓の右側に限局していれば手術は可能だと言われています。

セカンドセレクトでは胸腔内外科は現在のところ、対応可能な動物病院をご紹介しています。

まとめ

心タンポナーゼが起こった際は緊急対応が必要になります。

心嚢水除去はいつでも可能ですので、この記事を読んで「ひょっとして・・」と思った飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもご来院ください。

2019-11-15

以前ほどではなくなったのですが、動物病院で診療をしているとたまに先天性の疾患に出会うことがあります。

これらの病気では、犬種や猫種による遺伝的な背景があるものや、突発的に疾患をもって生まれてくる動物たちもいます。

そしてそれらの病気の中ではすでに重篤な症状が出ているものもあれば、全く気付かないものもあり、こういった気が付かれない病気は、何かの検査をした時にたまたま見つかることもあります。

今回はそういった病気の中でも代表的な病気、「門脈体循環シャント」についてご説明したいと思います。

門脈体循環シャントとは?

肝心という言葉がある通り、肝臓は臓器の中でも非常に重要で、かつ多岐にわたる働きをしている臓器です。

その重要な肝臓の働きの一つに、解毒作用というものがあります。

日常生活の中で体の中では全身の細胞が代謝をする過程で、不要な物質が発生します。

また食事をとると胃腸から食べ物が吸収されるのですが、食べ物は分解される過程で、栄養素だけが吸収されるのではなく、毒性のあるものでも同時に吸収していきます。

こういった体にとって不要もしくは有毒な物質は肝臓に送られて、有用なものに作り替えられたり、無毒化されます。

具体的に言うと、腸や膵臓や脾臓と言った内臓から出た血液は、肝臓の付近で門脈と言われる細い血管の束になって肝臓に送られます。

門脈を介して運ばれた血液は肝臓を通り、最終的には心臓に戻され、肺から酸素を供給され、再び全身に血液が供給されます。

門脈体循環シャントとは、本来肝臓を経由しないといけない血管の一部が肝臓を通らず、肝臓から心臓につながる血管に直接流れ込む疾患です。

肝臓によって有用化、無毒化されなかった物質が直接心臓から全身へ送られてしまうため、様々な症状が出てしまいます。

門脈体循環シャントの症状は?

門脈体循環シャントによって症状が出る多くの場合は1歳以下の若齢犬が多いと言われています。

見た目は明らかな発育不全があり、兄弟犬の中でも体格は著しく小柄なことが多いと思います。

また門脈体循環シャントが存在した場合の具体的な症状とすると、食後に嗜眠や徘徊が始まったり、場合によっては痙攣や昏睡をが見られることがあります。

これは食事中に含まれるたんぱく質が分解され、腸から吸収されるときに発生するアンモニアが、本来肝臓で分解されるのですが、その一部が肝臓を通らず体内を回ってしまうため起こります。

アンモニアは強力な神経毒で、体にとっては非常に有害な物質なため、長期的なアンモニアによる弊害は、場合によって死を招くことがあります。

ただ門脈体循環シャントが存在したからと言って、必ずしもこのような症状が出るとは限りません。

中には症状が全くないような個体もいるため、見逃されてしまうケースもあります。

まれなケースではありますが、臨床的にはこのような見逃されてしまった個体に麻酔処置などを行ってしまった場合、思わぬ事故を巻き起こすケースもあるため、気を付けないといけない疾患の一つだと思います。

検査方法は?

門脈体循環シャントを持っている犬だとしても、一般的に行うような血液検査には、肝臓の値も含めてほぼ異常値が見られないことが多いと思います。

腎臓の値としてよくみられる尿素窒素やアルブミンタンパク、コレステロールなどは肝臓で作られるため、これらの値は正常よりも低い値を見られることがありますが、必ずしもそうであるとは限りません。

今のところ最も感度がよい検査としては食前、食後2時間後に総胆汁酸と呼ばれる数値と、アンモニアを測定していきます。

総胆汁酸は肝臓で再合成されるため、門脈体循環シャントが存在した場合は必ず数値の異常が見られます。

ただし、門脈体循環シャントが存在していない場合でも異常値が見られることが多いため、これらの検査の総合的な判断から病気の疑いが強い場合にはCT検査を行い、実際に異常な血管が存在しているかどうかを調べます。

明らかな異常血管はエコー検査でも発見することはできますが、セカンドセレクトではエコー検査は感度としてはあまり高くないため、CT検査をお勧めしています。

治療法について

基本的に内科療法のみで症状をコントロールすることは難しいとされています。

低たんぱく質の食事をとらせる、アンモニア産生の腸内細菌の発生を抑えるなどが代表的な方法ですが、症状が顕著に表れている犬には、大きな効果は期待が出来ません。

よく言われる話なのですが、門脈体循環シャントは異常血管が肝臓の外にある場合は外科手術が可能であり、唯一の治療法だと言われています。

肝臓の中に異常血管がある場合には、手術は困難と言われていますが、最近では血管を残しながら肝臓の細胞を乳化させる医療機器もあるため、以前よりは手術対応範囲が広いとは思います。

セカンドセレクトでは残念ながら門脈体循環シャントの手術にはご対応できませんので、診断まで至った場合には対応可能な2次診療の病院をご紹介しています。

まとめ

門脈体循環シャントのような症例は時には飼い主様のご負担を大きくするとがあります。

できる限り動物だけでなく、飼い主様にもご負担が少ないような治療法をご提示していきたいと思いますので、何かお困りの際はお気兼ねなくご相談ください。

2019-11-08

動物病院ではよく何かを飲み込んだかもという犬や猫を連れていらっしゃる飼い主様は大勢います。

実際に飲んだのか、飲んでいないのかはっきりとしたことはわからないことも多く、飲んでいなかったというケースは意外と多いと思います。

ただ、たまに実際におもちゃなどを飲み込んでしていて、手術まで行わないといけないこともあります。

この際、異物が胃にあるのか、腸にあるのかで、かなり緊急性や重篤さが変わってきます。

今回はより重篤な症状になる腸内の異物についてご説明したいと思います。

胃内異物と腸内異物の違い

臨床的には同じ消化管の異物だったとしても、対応の仕方は全く異なります。

胃内異物はあまり症状として出ることはなく、見た目では気づかないこともよくあります。

実際に異物を摘出する方法も、催吐処置、内視鏡、胃切開による手術など、選択肢がいくつかります。

【胃内異物】犬、猫が何か飲み込んだ!?いまのところ無症状だけれど・・。吐かせる?手術?内視鏡?

一方で腸内異物は異物により腸が閉塞した場合は、非常に強い症状が現れます。

頻回の嘔吐、食欲の廃絶など見た目でも明らかな症状が現れます。

腸内異物を摘出する方法も外科手術のみになるため、治療の選択肢もあまりありません。

また外科手術を行うタイミングも、胃内異物の場合は緊急的に行わないといけないことはあまり多くないのですが、腸内異物の場合は時間の経過とともに腸組織へのダメージが深刻になることが多いため、可能な限り早い段階での手術が必要となります。

異物の内容はおもちゃや果物の種などの固形物や、ひも状の異物などが代表的なものです。

特にひも状の異物は、その長さによっては腸全体を絞扼してしまうため、非常に広範囲なダメージを深く残すことがあるため、もっとも気を付けないといけない異物の中の一つです。

手術となったら

腸内異物は触診やレントゲン検査で容易に判断できることもありますが、はっきりとしない場合もよくあります。

そういった場合にはバリウム検査を行うのですが、バリウム検査はあくまでもバリウムの通過する状況を見て判断する検査であり、異物の存在がはっきりとすることはあまりありません。

したがって腸内異物が極めて疑わしく、かつバリウムの通過が非常に遅い場合に、試験開腹という形で手術を行うケースがほとんどだと思います。

実際に手術となった場合、腸を切開し異物を取り除きます。

腸の組織は同じ消化管である胃に比べると、粘膜、筋層の厚さが非常に薄く、手術後の癒合不全が起こることがあります。

縫合した個所が問題ないかどうかを調べるためには、縫合後の腸の端を圧迫し、注射器にて生理食塩水を注入し、縫合個所から水が漏れてこないかどうかを確かめます。

このような確認を行っても、癒合不全は手技的な要素も含まれることもあります。

ただ、たいていの場合は犬や猫の状態が極めて悪かったり、手術に至るまでの間に食事がとれていないなどの要因で血清タンパクの量が低かったりすると、起こりやすくなると言われています。

また、腸のダメージが深刻だった場合、ダメージの大きい腸を切除し、腸同士をつなぎ合わせる端々吻合手術になった場合は、手技的な失策がなかったとしても数%の確率で起こると言われています。

このあたりは胃の手術と大きく異なるところだと思います。

予後について

腸自体の癒合は2週間ほどかかると言われており、術後3日後が一番脆弱であると考えられています。

ただ術後は状態が安定しているようであれば、手術後48時間から72時間後ぐらいから少量づつ食事をとらせていきます。

セカンドセレクトを含め、一般的な動物病院では通常、4日から1週間程度の入院となりますが、腸内異物の動物は当初より状態が危ういケースもしばしばあるため、予想よりも予後は悪いこともあり、入院期間も長期になることもあります。

結局のところ、腸内異物は症状の発現に至ってから手術までどれくらい短い期間で行えるのかが予後に大きくかかわってきます。

まとめ

セカンドセレクトではバリウム検査を含め、内視鏡検査を行うこともできます。

もしご自宅の犬や猫が突然に多数回の嘔吐が見られるようになったら、いつでもご来院ください。

2019-10-30

最近よく遺伝子検査という言葉をよく聞くようになりました。

血液検査やレントゲン検査などは昔からある検査ですので耳慣れた名前ではありますが、遺伝子検査と言われるとまだ小説や映画の話のように聞こえるかもしれません。

70年ほど前に生き物の体の中にある遺伝子というものの存在が明らかになり、動植物だけでなく、細菌やウイルスなどの遺伝子解析が盛んに研究されています。

人間の遺伝子は20年ほど前にすべての遺伝子の配列が解析され、今日ではそれを応用した医療技術が発達し、以前に比べると安価に遺伝子検査を行うことができるようになりました。

ペットの場合も遺伝的な背景のある病気が数多くあり、その一部の病気は遺伝子検査により発症のリスクを調べることができるようになりました。

今回の記事では、そんな遺伝的疾患の中で昔からある病気の一つとして知られる「変性性脊髄症」をご説明させていただきます。

変性性脊髄症とは?

変形性脊椎症はウエルッシュコーギーを代表とする特定の犬種で起こる進行性の神経麻痺疾患です。

その他、日本でよく見かける犬種としてはバーニーズマウンテンドッグの発生がよく知られています。

脊髄神経が変性することによって麻痺が起こるのですが、この変化についてはまだわかっていないことがたくさんあるため、どのような形で麻痺まで進むのかはわかっていません。

おおよそ8歳ぐらいから症状が出始めることが多く、最初は後肢が躓くようになったり、起立時に震えが目立つようになります。

それからだんだんと後肢が完全に動かなくなり、ちょうどそれくらいの時期に前足の方にも兆候が出始めます。

排尿麻痺や排便困難な状態もこのころからみられるようになり、飼い主様のご負担はかなり増加してきます。

発症に気づいてから2年ほど過ぎると前足も完全に動かなくなり、完全介護状態となります。

平均して発症から3年程度で呼吸器の神経も麻痺をしてくるため、生存が困難になります。

検査方法や治療法は?

変性性脊髄症にかかった犬において、特異的な検査上の異常は特にありません。

レントゲンはもちろんのこと、MRIを用いた画像診断でも検査上の異常な所見は見つかりません。

見かけ上で変性脊髄症なのか他の神経疾患なのかは見分けがつくことは容易でないことも多いので、画定審打破できなくても、こういった基本的な検査を行う必要性はあると思います。

治療法に関しても有効と思われるものはなく、投薬療法もあまり効果は見出せません。

セカンドセレクトで行う治療でも、基本的にはリハビリ治療のご指導などをするほか、鍼治療などにより進行の遅延を目指すにとどまってしまいます。

遺伝子検査は必要?

変性性脊髄症は検査に特異的なものがないため、麻痺の進行状況とそのほかの神経疾患の除外によって診断をつけるのですが、数年前より遺伝子診断ができるようになりました。

血液サンプルを取って診断することが可能なのですが、変性性脊髄症は複数の遺伝子が関与していると考えられており、遺伝子診断で完全に判明することはできません。

したがって変性性脊髄症を患った犬が検査で必ず陽性反応が出るとは限りません。

ですが今のところ唯一の診断方法ではあるので、好発犬種に疑わしい症状が出た場合には積極的に検査を行ってもいいと思います。

まとめ

世の中にはどんなに医学が進歩しても治らないと言われている病気は数多くあります。

セカンドセレクトではそういった病気にかかった動物たちや飼い主様のご負担を少しでも軽くできるように努力していますので、何かお困りのことがあればいつでもご相談ください。

2019-10-23

セカンドセレクトは練馬区東大泉に開院してちょうど1年になりますが、その前は往診専門の動物病院として診療していました。

開院後は通常の動物病院としての診療や手術を行っている一方で、現在でももちろん往診診療も行っています。

動物病院の往診ってどれくらいできるの?寝たきりの動物だけが対象?というご質問をよく受けるのですが、セカンドセレクトで行っている往診診療はほぼ何でもできます。

往診ならではのメリットも多数ありますので、ご希望の方はお気兼ねなくご相談ください。

【セカンドセレクトの往診】往診だから得られる3つのメリット

この記事ではそんなセカンドセレクトで行っている往診風景をご紹介したいと思います。

今回の症例は免疫介在性血小板減少症です。

どこの往診専門の病院でもあまり取り扱わない疾患なのですが、セカンドセレクトでは往診でも対応していますのでご興味のあるかたは記事を読んでいただきたいと思っています。

免疫介在性血小板減少症とは?

異常な自己免疫システムによる血小板の破壊により、出血傾向がみられる病気です。

放っておけば内臓出血をも引き起こす怖い病気ですが、治療への反応は良く、予後は良い病気です。

【免疫介在性血小板減少症】マルチーズなどに多い免疫疾患。急に赤いあざ?内出血?

往診での診察とは・・・

基本的に往診での診療は病院内での診療をほぼ変わりません。

まず体重を測定した後、全身状態をチェックします。

特に免疫介在性血小板では目や口腔内の粘膜面や内股の皮膚などに紫斑と呼ばれる内出血が出るため、全身をよくチェックします。

今回の症例の治療前の写真です。

ちょっと見にくいかもしれませんが、現在の写真です。

治療にはもっぱらステロイドを使用するため、血液検査で血小板の測定と肝臓などのステロイドの影響が出やすい項目を検査します。

採血した血液は病院に持ち帰り検査を行い、結果は当日もしくは翌日に電話、メールなどでご報告しています。

セカンドセレクトではこういった免疫疾患の治療においては、ステロイドの年間許容量以下の投薬ですむ症例に関して、2~3か月おきの検診にて経過を観察しています。

今回お伺いさせていただいた飼い主様の犬も、現状は落ち着いているため、2か月おきの検診を往診で行っています。

まとめ

他にも以下のような症例で往診による診察を実際に行っています。

往診で高齢の猫の便秘を管理する!セカンドセレクトの往診風景。

猫の膵炎を往診で管理してみました。セカンドセレクトより。

猫がくしゃみ、鼻水。ちょっと熱っぽい・・・セカンドセレクトの往診でネコ風邪を治療する!

もちろん記事なっていないような病気も往診で対応しています。

この記事を読んでみてこんな病気でも往診で可能なのか・・・とご興味がありましたら、いつでもお気兼ねなくご連絡ください。

2019-10-18

慢性的な病気というのはどんなものでも厄介なものだと思います。

慢性腎不全、慢性肝炎など健康状態を脅かすような重篤なものから、慢性外耳炎、慢性膀胱炎など食欲や元気などには影響は少ないのですが、症状が出るたびに治療をしないといけないものまであります。

動物病院でも慢性的な病気にを患っている動物たちが日々多く来院しています。

今回は慢性的な病気の中でも、慢性的な下痢を主症状とする病気、炎症性腸疾患というものをご説明したいと思います。

炎症性腸疾患とは?

炎症性疾患とは特定の病名ではなく、腸の組織で様々な炎症性の細胞が過剰に活発化することで、腸炎を引き起こす病態の総称になります。

程度は様々ですが、軟便、下痢と言った便の異常がよく見られ、嘔吐も頻繁にみられることがあります。

出現する割合が多い細胞によって病名が異なり、リンパ球性形質細胞性腸炎とかリンパ球性プラズマ細胞性腸炎とか、好酸球性腸炎などの病名がつきます。

ただ、臨床上は犬種や猫によって出現する細胞に差はあるものの、細胞の種類によって治療が異なることはあまりありません。

むしろそういった異常な炎症性細胞の増殖が腸全域でおこっているのかどうなのかは病状の重さに大きくかかわってくるため、小腸だけでなく大腸にまで病巣が出現しているのかは予後判断のためにも非常に重要です。

検査方法・内視鏡は必要?

下痢がみられる病気は数多くあるため、検査として重要な項目は、下痢を引き起こしている根本の病気があるのかどうかを調べることです。

最近では寄生虫に感染しているような犬や猫はほとんど見られなくなりましたが、検便による寄生虫の有無や膵臓の機能の検査は必須となります。

また甲状腺や副腎皮質といった内分泌の異常によって下痢が頻発することもよくあるため、こういった血液検査も必要となります。

レントゲンやエコー検査などの画像診断も重要ですが、これらの検査で腸に炎症性の細胞が多く出ているかどうかはわかりません。

厳密にいえば、腸粘膜の生検が必要で、一般的には内視鏡検査を行います。

ここからはあくまでも個人的な意見なのですが、病状の初期段階から内視鏡検査を行うことはほとんどないと思います。

理由としてはある程度診断が固まった時点では、使用する薬剤に大きな違いからというのがその理由です。

内視鏡検査自体も麻酔をかける必要があるため、検査の中では動物の負担が大きいものとなるからです。

ただし、予想していたよりも病状の回復がないなどの場合には、あまり時間を変えずに内視鏡検査の導入を考えた方がいいと考えています。

実は炎症ではなく腸の腫瘍だった・・ということもあるからです。

特にタンパク漏出性腸炎と呼ばれる、血液中のタンパク濃度が低下する腸炎では、リンパ腫といった腫瘍のぞんざいがあるケースも多々あります。

【たんぱく漏出性腸炎】治らない下痢が続く、意外と多い腸の病気。原因は?治療は?内視鏡検査は必要?

いずれにしても慢性的な下痢は放っておくと、動物自体の一般状態を著しく低下させるため、適切な治療を行えるような材料を集める必要があるため、多項目にわたる検査は必要だと思います。

治療法について

治療は通常の整腸剤に加え、免疫を抑制する薬が必要になります。

代表的なものはステロイドになります。

ステロイドは即効性もあり、効果も非常に高いため、初期段階では導入しやすい薬です。

ただし、猫の場合はステロイドの副作用をあまり考えなくてもいいのですが、犬の場合は個体によってステロイドの副作用に対する抵抗性が非常に弱いこともあり、高容量の投与や長期的な投薬には不向きなこともあります。

そういった場合にはその他の免疫抑制剤を使用します。

使用する薬は数種類あり、どの薬を使用するかは獣医師の好みにもよるとは思いますが、効果の程度には大きな差はないと考えられています。

セカンドセレクトでは、投薬の容易さやコストなども合わせて検討させていただいておりますので、ご心配な点がありましたらお気兼ねなくおっしゃってください。

食事はどのようにすればいい?

以前はアレルゲンフリーの食事が基本でしたが、最近では低脂肪食をお勧めしています。

まだよくはわかっていないのですが、食事に含まれている脂肪が腸に何らかの刺激を与えているのではと考えられています。

各フードメーカーから色々なタイプのローファットのペットフードが販売されています。

飼い主様のご負担でなければ、ささみや白身の魚を主体とした手作りのものを与えてもいいと思います。

食事の内容についてご質問がある場合はお気兼ねなくご相談ください。

まとめ

炎症性腸疾患は人間でも多くの方が患っている病気です。

今のところ根本的な治療法はないのですが、できる限り負担を抑えた治療を心がけていきますので、ご安心してご来院下さい。

2019-10-12

めまいという言葉があります。

人間の女性や働きすぎのサラリーマンにはよくみられる症状なのですが、目が回って立てなくなるほどの症状が出ることもあります。

動物の世界でもこういった目が回る症状がみられることがあります。

動物の種類によって原因は様々なのですが、一般的には前庭疾患と呼ばれています。

今回は動物種によって異なる前庭疾患についてご説明したいと思います。

前庭疾患って?

ご存知の飼い主様も多いとは思いますが、前庭とは内耳にある三半規管を含んだ器官で、主に平衡感覚などの位置感覚を感じることができます。

左右の内耳に一つづつ存在しますが、鼓膜の向こうにあるため、肉眼的に外から確認することはできません。

前庭疾患は何らかの理由により、前庭に炎症がおこることで、平衡感覚の異常が起こります。

大抵の場合、斜頸と呼ばれるような前庭疾患がある側の方向に顔が傾く状態になります。

また眼振と言って、眼球が左右に振れだす症状も見られます。

まさしく目が回っているという表現が正しく、病状が発生した初期段階では起立することもままならないことがほとんどで、食欲不振や嘔吐などもみられることもあります。

犬の前庭疾患

犬の前庭疾患の場合、多くの場合は老犬にみられる特発性、つまり何の原因もなくいきなり前庭疾患が現れることがほとんどです。

この場合、眼振と斜頸が見られるほか、嘔吐と食欲不振が目立つようになります。

抗生剤やステロイドを投薬しながら経過を見るのですが、眼振が続いているうちは嘔吐、食欲不振が続くため、セカンドセレクトでは制吐剤を併用しながら、皮下注射にて経過を見ていくとをお勧めしています。

老犬が数日食欲不振が続くと、一気に体重の減少と活動性の低下がみられるため、自力採食が見られるまでは、皮下補液を行った方がいいというのもその理由の一つです。

数日して眼振が治まってくると食欲も回復してくるので、その後は内服に切り替え様子を見ていきます。

投薬は約2週間程度行い、ほぼ問題なく回復することが多いのですが、軽度の斜頸が後遺症として残ることもあります。

一方でフレンチブルドッグなどの特定の犬種の場合は、特発性ではなく重度の外耳炎が内耳炎に波及して前庭疾患が起きることもあります。

特にこれらの犬種では、耳道内の腫瘍の存在により、細菌の繁殖がとめどもなく起こるため、膿性の耳垂れが常に起こることが普通です。

こういった場合は外科手術も含めて検討しないといけないことも多いのですが、耳道内の腫瘍は手術が困難で、かつ後遺症も残りやすいため、慎重な判断が必要になります。

猫の前庭疾患

猫の前庭疾患はほとんどの場合、重度の外耳炎からの前庭疾患か、耳道内の腫瘍の存在によるものが多いと思います。

症状は犬の前庭疾患とほとんど変わらないのですが、犬と違い、何らかの基礎疾患があるために、その根本の疾患を治療しないと回復してこないことがよくあります。

ただこのブログでも何回かご説明させていただいていますが、腫瘍に代表されるような耳道内の異常は、根治させることがかなり難しいので、完全に症状から離脱するためには長期間必要になります。

【耳道内のポリープ・腫瘍】強い耳ダレがあったら要注意。維持治療?手術?

また犬と違い、自宅での投薬が容易でないことも多く、しばしば飼い主様のご負担が大きくなります。

ウサギの前庭疾患

ウサギの前庭疾患は、一般的によく見られる症状ですが、犬や猫に比べて症状が重篤であることが多いと思います。

とくに斜頸の強さは首が180度以上回転することもあり、姿勢を保持することが出来ず、発作的のその場で回転し、眼球などに傷がつくこともあります。

前庭疾患の原因はあまりよくわかっていません。

口腔内などに存在している常在菌が内耳に侵入して症状が発現するとか、脳に寄生する原虫によって引き起こされるなど様々なことが言われています。

また、犬や猫に比べて使用可能な抗生剤やその他の薬が著しく少ないため、治療の選択肢も多くないというのもうさぎの前庭疾患の特徴です。

前庭や脳の炎症を抑えるために使用するステロイドに対しても抵抗性が弱いため、長期的な投与は可能な限り避けたいのですが、ステロイドを休薬すると再発が見られることもあるので、薬の止め時をはかるのはかなり難しいことがよくあります。

脳に寄生する原虫に対しての薬もあるのですが、その効能もはっきりとはしません。

いずれにしても犬や猫の斜頸と違い、ウサギの場合は症状が改善しないことも多く、発症後は介護生活を余儀なくされることも多いと思います。

まとめ

動物によって斜頸に対する治療法は異なります。

セカンドセレクトでは動物種にかかわらず治療を行うことが可能ですので、この記事を読んでご質問がある飼い主様がいらっしゃいましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

2019-10-07

若い犬はとにかくよく動きます。

あんな華奢な体で、これほどまでに激しい動きをしても大丈夫なのかと心配される飼い主様も多くいらっしゃると思います。

犬種にもよりますが、人間の子供と一緒で、関節自体も軟らかいため、仔犬はあまり大きなけがは滅多に見かけません。

ただたまに動きが激しすぎて、びっこなどを引くこともあります。

大抵の場合は1日程度で落ち着くのですが、中にはびっこが全く治らないケースもあります。

そんな仔犬の突然のびっこの理由の中で、後肢のびっこの場合によく見かける原因は脛骨粗面剥離骨折と言われるものです。

今回はそんな若い犬に特に多い骨折についてご説明したいと思います。

脛骨粗面って?

脛骨粗面はすねの骨のひざの関節の近いところにある部分の名称です。

脛骨粗面には膝関節を形成する強力な靭帯が付着している部分です。

写真では見にくいのですが、成犬の場合はレントゲン上でざらついた感じの表面になっているところを指します。

成長期の犬の場合、脛骨粗面は骨の成長線と重なり、軟骨性の骨でできているため、正常な犬のレントゲンでも脛骨粗面は浮いているように見えます。

剥離骨折するとどうなる?

脛骨粗面剥離骨折は実際どのようにして起こるのかはわかってはいません。

脛骨粗面は靭帯の付着部分となります。

人間の場合は、強度の強い運動などで起こる膝の屈伸時に、強力な靭帯に上へ引っ張られてしまい、もともと弱い軟骨のような状態の骨が浮いてしまうことで剥離骨折が起こります。

犬の場合は外傷性の場合もあると言われています。

脛骨粗面剥離骨折を患った犬は、地面に足をつくことを嫌がるようになり、触診上では膝を屈伸させると疼痛が見られるようになります。

診断は基本的にレントゲンにて判断をするのですが、意外と困難な時もあります。

もともと若い犬脛骨粗面はレントゲン上で浮いているように見えるため、生理的にそう見えるのか剥離骨折をしているのか、判断に迷うこともあります。

下のレントゲンでは左右差がほとんどなかったのにもかかわらず、結果的に手術になりました。

このような場合には数日後に再度レントゲンを撮影し、剥離の状態を確認するか、CT検査を行ったりすることもあります。

治療法は?

剥離骨折の程度があまり重度でなければ、安静にしながら経過を見る程度で治癒することもあります。

個人的な意見としては、剥離骨折を起こすような若い犬は、たいていの場合非常に活動的であるため、安静を取らせることが非常に困難であることが多いと思います。

ケージに入れてもジャンプをしようとしたりするため、場合によってはギブスを装着し固定する必要もあります。

下のレントゲン写真の犬は、レントゲン上の剥離の程度は大きかったのですが、結局手術はせず治癒をしました。

一方で疼痛が治らない、レントゲン上で剥離している部分がどんどん拡大していくような時には手術になります。

セカンドセレクトでは整形外科に関しては他の動物病院をご紹介させていただいております。

手術は剥離している骨片をワイヤーなどで固定します。

執刀しない獣医師が言うのも変だとは思いますが、手術自体の難易度はそれほど高いものではなく、予後は非常にいいと思います。

料金は都内であればおおよそ15万円から20万円程度が相場だと思います。

まとめ

脛骨粗面剥離骨折はたいていの場合、家に来てすぐ起きることが多いと思います。

家に来て早々に手術か・・・と落胆される飼い主様も多いとは思いますが、できる限り当該の犬だけではなく、飼い主様のご負担を軽減できるような治療を進めていまいりますので、いつでもお気兼ねなくご来院ください。

2019-10-02

貧血という言葉は誰もが知っている医学用語だと思います。

臨床現場では貧血という症状は厄介なことがよくあります。

その理由の一つとして原因がどこにあるのか、すぐには判断が出来ないことがよくあるからです。

そして動物病院での診察において、貧血は犬や猫によくみられる症状です。

今回ご説明したいのは、数ある貧血の原因の中で意外と多い病気、免疫介在性溶血性貧血というものです。

セカンドセレクトに通院されている犬や猫の中にもこの病気を患っている仔は多くいるので、この記事を読んで参考になった飼い主様がいらっしゃいましたら幸いです。

免疫介在性溶血性貧血とは?

免疫介在性溶血性貧血はその名前通り、免疫が絡んで貧血が起こります。

血液中に含まれている赤血球の膜に対する抗体が何らかの理由で産生され、過剰に赤血球が壊されることにより貧血が急速に進んでいきます。

元気や食欲がいきなりなくなる、息遣いが荒いなどの症状がみられて動物病院に来る飼い主様がほとんどなのです。

また口の粘膜や舌の色が白いことなどに気づかれる飼い主様もいらっしゃいますし、場合によって尿の色が黄色から橙色に変化したことに気づき、慌てて来院する飼い主様もいらっしゃいます。

原因は?

免疫介在性溶血性貧血の原因には様々な原因が言われていますが、明らかに病気にかかりやすい犬や猫の傾向があるので、遺伝的なものも関与していると考えられています。

猫には種差はないのですが、犬ではコッカーやミニピン、ミニチュアシュナウザー、マルチーズなどの人気犬種が好発犬種となります。

また雌や去勢犬は未去勢犬よりもなりやすいと言われているので、去勢するデメリットの一つとして考えられています。

またこの病気にかかった3割程度の犬では、病気を発症する4週間以内にワクチンを接種しているというデータもあり、ワクチンの重篤な副作用の一つとして考えられています。

少し話はそれますが、セカンドセレクトではこういった日常的に接種されているワクチンの副作用を避けるべく、犬においてはワクチンの抗体価を計測することをお勧めしています。

【ワクチンの抗体検査】1年に1回ワクチン接種おこないますか?

免疫介在性溶血性貧血は特定の感染症によって引き起こされることもよく言われているのですが、都内に在住している犬であれば、あまり遭遇することはないものばかりです。

一方猫では感染症によって引き起こされるケースは割とよくあり、猫伝染性腹膜炎などのウイルス性疾患では貧血の進行が進む原因となります。

【猫伝染性腹膜炎】いまだに解明できていない猫のコロナウイルス疾患。診断方法、治療法は本当にないの?

検査の方法は?

免疫介在性溶血性貧血を確実に診断する方法は現在のところありません。

大抵の場合、クームステストという検査を行い、赤血球の膜表面に抗体があるかどうかを調べて判定をします。

ただクームステストは感度が非常に高い検査ではなく、免疫介在性溶血性貧血の犬や猫でも半数程度は陰性判定になってしまいます。

その他、この病気だけにみられるような特異的な血液検査上の異常値もないため、クームステストで判定できなかった貧血の症例は一通りのスクリーニング検査を行い、それでもその他の原因がないと判断された場合に試験的な治療を開始していきます。

ただ実際には、クームステストに関しては外注検査のため結果が出るのに最大で2日かかるので、免疫介在性溶血性貧血が疑わしい症例に関しては同時にすべての検査を行います。

クームステストに合わせて行う検査は、レントゲン、エコー検査、血液検査がその主な内容ですが、おおよそ20000円から30000円程度の検査費用になります。

治療法について

基本的にはステロイドを内服として投薬しながら治療していきます。

ステロイドによる治療開始後3日程度で回復してくることが多いのですが、中には難治性の場合もあります。

特に猫の場合はこの病気を引き起こす不治の基礎疾患があることが多く、非常に予後は厳しいことが多いと思います。

セカンドセレクトではステロイドのほかにも、日本で認可されていないものも含めた様々な免疫抑制剤を常時取り揃えているので、手厚い治療を施すことが可能です。

たまに完全寛解といって、薬を使用しなくても貧血が見られない状況になることもあるのですが、ほとんどの場合はステロイドやその他の免疫抑制剤をやめることはできません。

1か月にかかる治療費も薬によって様々です。

ステロイドのみで維持できる場合は月に4000円程度で済むのですが、服用しないといけない免疫抑制剤の種類によっては、小型犬でも3~4万円程度かかることもあります。

できる限り飼い主様のご負担を減らした治療をしていきますので、ご不明な点があればいつでもご質問ください。

まとめ

通常貧血の進行は緩慢で、なかなかご自宅で気づくことはないのですが、免疫介在性溶血性貧血はその進行が急激で、かつ重篤化することがよくあります。

ご自宅で飼われている犬や猫の下の色が白いなどの症状に気づいたら、いつでもご来院ください。

2019-09-26

膵臓という臓器は多様な役割を果たしています。

内分泌と言われる血糖値をコントロールするインスリンなどの分泌と、外分泌と呼ばれる多様な消化酵素の分泌が主な役割になります。

これらの働きは非常に緻密で、精密機械のようにコントロールされているのですが、この緻密さが破たんしたとしても、すぐに自覚症状が出ないことはよくあります。

膵臓癌のような悪性腫瘍であっても、サイレントキラーと呼ばれるようにその症状は末期までわかることはなく、膵臓に関する病気はしばしば診断を悩ますことになります。

今回ご紹介したい病気はそんな膵臓の病気の中で、膵外分泌不全と呼ばれる病気になります。

獣医師にとっては割とメジャーな病気なのですが、実際の診療現場では初期段階から診断されることはあまりない困った病気です。

慢性的な下痢をしている犬や猫を飼われている飼い主様の中でこの記事を読んで思う節があればいつでもご相談ください。

膵外分泌不全とは?

体の中の分泌腺で作られた物質は大まかに分けると血流に放出される内分泌と体の外に分泌される外分泌とがあります。

膵臓はこの内分泌、外分泌のどちらも行う臓器なのですが、このうち外分泌は膵液と呼ばれる消化酵素を消化管に分泌することを言います。

膵液には様々な消化酵素が含まれており、高校生の生物の授業などでは色々な語呂合わせで覚えた記憶があります。

膵液に含まれる消化酵素によって、タンパク、糖、脂肪といった体に必要な栄養素のほとんどが効率よく消化することができます。

膵外分泌不全はこの消化酵素が分泌されなくってしまうため、栄養素を消化することが出来ず、慢性的な下痢、体重減少がよく見られます。

つねに飢餓状態のようになっているため、食欲は非常に旺盛なことが多く、食べても食べても栄養にならずどんどん痩せていくようになります。

下痢は黄色もしくは白みがかった脂肪便が出ることが多いのですが、普通の下痢と区別がつかないような便が出ていることもあります。

膵外分泌不全の原因と検査は?

膵外分泌不全になる原因は明らかにはされていないのですが、ジャーマンシェパードなどの特定の犬種では、遺伝的に若いころから膵臓が委縮していくことで膵外分泌不全になることが知られています。

ただ、セカンドセレクトのように都内にある病院ではそもそもジャーマンシェパードを見かけることがあまりないため、膵外分泌不全の原因のほとんどは慢性的な膵炎を患った高齢の犬や猫がほとんどです。

これらの犬や猫では食欲は活発なのにもかかわらず、慢性的な下痢と体重減少が見られるのですが、一般的な血液検査ではほとんど異常が見られません。

一般的には特異的な膵臓の酵素の値を計測するのが有効な診断方法になるのですが、困ったことに必ずしも検査に陽性反応がでるというわけではないため、しばしば診断が困難になることもあります。

膵外分泌不全の治療は通常の胃腸炎の治療と並行して行うことができるため、結局のところ疑わしいような兆候があった場合には膵外分泌不全の治療に入るケースがほとんどです。

治療法は?

膵外分泌不全に陥った犬や猫は多くの消化酵素が不足しているため、食事に膵液に含まれる消化酵素を十分量与える必要があります。

人工的な消化酵素は非常に多量になるため、大抵の飼い主様はその量をみると少し驚かれると思います。

また食事の内容も低脂肪食が基本になるため、ドライフードであれば脂肪分が7%前後の処方食か、ささみやブロッコリーなどを湯がいたものを与えていただくのが理想です。

これらの治療でたいていの場合は便の性状は大幅に改善するのですが、慢性的な下痢を起こしているため、腸内細菌叢が非常に悪化しているため、善玉腸内細菌や抗菌剤の投与が必要になることもよくあります。

また高齢の猫の場合は原因となっている慢性膵炎の治療が必要となるケースもあり、ステロイドなどの投薬が必要になることもあります。

特に栄養状態が極めて悪化している犬や猫はその栄養をダイレクトに補給する必要もあるため、栄養素の補給、特にビタミン剤の投与などが必要になります。

このような治療でほとんどの犬や猫は改善するのですが、まったく症状の改善が見られないケースもあり、それがただ単に病状が進み切ってしまい治療に反応がないのか、それとも見つかっていない違う原因があるのか判断することは簡単なことではありません。

とにかく消化器の症状は多様な原因が重なっていることも多く、また原因は一つでないこともあるため、少しづつ検査や治療を加えながら様子を見ていくしかないと思います。

まとめ

慢性的な下痢はもちろん当の動物の生活を落とすことになるのですが、その世話をしないといけない飼い主様にも多くの負担がかかります。

もしこの記事を読んでいる飼い主様の中で、慢性的な下痢を起こしている犬や猫を飼われている方がいらっしゃいましたら、いつでもお気兼ねなくご相談下さい。